おやぢの部屋2
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STRAUSS/An Alpine Symphony




Antoni Wit/
Staatskapelle Weimar
NAXOS/8.557811



歴史をさかのぼれば、その創設は1491年のことになるという、あの「世界最古」のオーケストラ、シュターツカペレ・ドレスデン(1548年創設)よりも先に生まれたオーケストラが、ここで演奏しているシュターツカペレ・ワイマールです。ただ、いくら歴史では勝っていても、このオーケストラがドレスデンをうわまーるほどの名声を博しているとは、決して言えないのが現実です。少なくとも、録音の世界では全く「無名」と言っても差し支えないでしょう。ARTE NOVAからフルトヴェングラーの交響曲全集を出しているのを見たことがあるぐらい、私が実際の音を耳にしたのは今回が初めてです。
しかし、聴いてみるとこれがなかなかいい音を出しているではありませんか。特に金管楽器の力強さには驚かされます。木管も、非常に良く溶け合った素晴らしいアンサンブルを聴かせてくれていますし、なによりも弦楽器が、とことん豊かな音で主張してくれるのを忘れていません。最近発売になった超有名なオーストリアのオーケストラ某フィルと、同じく超有名なオーストリアの指揮者某クールのチケットを血眼になって探し回るより、全くの無名でも素晴らしいものが味わえるこういうものを聴いた方がどれだけ実のある体験が得られることでしょう。
実は、このCDには、今まで大編成の曲を聴いて裏切られることの無かったポーランドの指揮者ヴィットの名前があったので、つい手が伸びてしまいました。ペンデレツキやメシアンであれだけ颯爽としたものを聴かせてくれたヴィットが、シュトラウスではどんな演奏を聴かせてくれるのかという点に、非常に興味があったのです。
ここでも、彼のスマートな音楽の作り方は、その冴えを存分に見せていました。彼の最大の特質は、非常に整った形で音楽を進めていくことなのではないでしょうか。そこからは、先の読める、見晴らしの良い風景が広がります。彼はこの曲を、とことん「描写音楽」と捉え、徹底的にスペクタクルなものに仕上げるために、余計なものをそぎ落として、ひたすら「描写」という目的に向かって邁進しているように見えます。ですから、シュトラウスのスコアの中に、「サロメ」の淫靡さや、「薔薇の騎士」の芳醇さが込められている部分があったとしても、そんな「匂い」を嗅ぐためにいちいち立ち止まっているよりは、それらの前を潔く通り過ぎてしまうという道を、彼は選んだに違いありません。彼が作り出そうとしたものは、たとえば、いにしえのカール・ベームが「同時代人」として慈しんだシュトラウスとは全く異なる、21世紀にも通用する「アルプス」の姿だったのですから。
そこまできちんとした設計がなされた時、このオーケストラは見事にその指揮者の要求に応えた、エッジのきいた音楽を作り出してくれました。もちろん、その最大の成果は「嵐」の場面でしょう。まさに、ハリウッドの映画音楽さながらの目の覚めるような風景が眼前に広がっているさまからは、後期ロマン派の香りを現代まで引きずっていた作曲家の姿は決して見えては来ません。それは、まさに「映画音楽」として別の道を歩むようになった「ツァラ」の後ろ姿を見る思いに通じるものなのでしょう。
今回聴いてみて、はたと気が付いたのですが、山頂付近で聞こえてくる「ソ・ミー、ソ・レー、ソ・ドー(移動ド)」というフレーズは、ブルッフのヴァイオリン協奏曲の第2楽章のテーマそのものなのですね。もちろん、ブルッフの曲はシュトラウスが2歳の時の作品ですから、真似をしたのはシュトラウスの方です。もう一つ、高い音のEsクラリネットから始まって、ファゴットの低音までつながるという印象的なフレーズ(このオーケストラは、こういう難所で、異なる楽器をさりげなくつなげるのがとても上手)は、ブルックナーの5番に出てきましたね。別にそれがどうしたと言うことではないのですが、その他にもヴァーグナーの引用などがことさら目立って聞こえてきたのは、もしかしたら、この演奏ではシュトラウス本人の匂いが、それだけ薄まっていたせいだったからなのかも知れません。
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by jurassic_oyaji | 2006-08-17 19:32 | オーケストラ | Comments(2)
Commented by ちぇり at 2006-08-18 23:15 x
  ヴィットといえばマーラーやシューマンの交響曲で大変印象が良かったのを覚えています。確かポーランド放響がオケだったはずですが。今回のこのコンビにおける演奏は興味がわきますね。きいてみたいです。
Commented by jurassic_oyaji at 2006-08-19 00:21
最近はワルシャワ国立フィル(8番)に変わりましたね。
このワイマールもなかなか相性が良いようです。これでシュトラウスの全集でも作ってくれれば良いのですが。