おやぢの部屋2
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「風をみる」


小原孝(Pf)
森ミドリ(Cel)
岩渕秀俊・末光眞希/
東北大学男声OB合唱団・Chor青葉
PRIVATE/AOBA-003



普通でしたら、ここでアマチュアの、ほとんど内輪だけの演奏会のライブ録音など取り上げることはないのですが、この2枚組のCD、そのあまりのクオリティの高さはまさに「商品」の域に達していると判断して、あえて「おやぢ」の仲間に入れさせて頂きました。
この合唱団は、仙台市にある大学の男声合唱団のOBの集まりなのですが、本来の男声合唱の他に、学生時代に仲間として交流のあった他の大学の女声合唱団のOGや、もろもろのつながりで集まった女性を加えて、「Chor青葉」という混声合唱団を結成しました。仙台は、若葉の季節でもまだまだ寒いですからね(それは、「凍る青葉」)。その、男声、混声という2つの形態を持つ合唱団としての演奏会を、東京オペラシティのコンサートホールで毎年開催して、今回がその3回目となります。回を重ねるごとにユニークなゲストが加わるようになり、前回に引き続きピアニストの小原孝さんとの共演のステージが一つの目玉ともなっています。今回は、さらに作曲家の森ミドリさんと、絵本作家の安野光雅さん(なんと、作詞家デビュー)が加わり、そのユニークさはさらに際立つようになりました。
全部で4つのステージで構成されている演奏会、最初の3つのステージは男声合唱や混声合唱の古典ともいうべき、ベタな選曲で迫ります。
最初は100人から成る男声による、多田武彦の「雪明かりの路」。出だしの「ふんわりと」というト長調の響きが聞こえてきた時、その厚みのある音にはちょっと驚いてしまいました。このときの録音機材についてはこちらでご紹介していましたが、そのショップスのワンポイント、DSDによる録音は、木材を多用したこのホールの美しい響きをたっぷり取り込み、とても自然で、しかもしっかりとそれぞれのパートの密度が感じられるとても素晴らしいものだったのです。これこそがまさにプロの仕事、いたずらに残響や高域を強調したそれこそ「商品」として販売されているあまたの合唱CDなどとは比較にならない高水準の仕上がりになっています。
次のステージでは、200人の混声にピアノが加わって、髙田三郎の「心の四季」。そのピアノの音のなんとみずみずしいことでしょう。こんな大人数の合唱にも埋もれることなく、その輝かしいタッチは伝わってきます。もちろん、合唱も混濁など一切見られない、とても爽やかな音です。
1枚目のCDの最後は、三木稔の「阿波」、もちろん、無伴奏の男声です。各パート間のポリフォニーが、この見事な録音で際立って聞こえてきます。あるいは、あまり録音が良すぎて、「本当はこういう音なのかも知れない」などという邪推が混じってしまうのは、致し方のないことかもしれません。
最後のステージは、アンコールも含めてCD1枚1時間という長丁場です。もし、これを聴かれる機会がある時には、ジャケットの曲目を見ないで鑑賞されることをお薦めします。そうすれば、意外な組み合わせの曲同士が、小原さんのピアノと絡みついて特別なサプライズを産み出しているのが分かるはずです。この演奏会のテーマが、タイトルにあるような「風をみる」。そして、このステージこそ、そんな「風」に託して様々な思いを込めた数々の「うた」の集まりが、とてつもない力となって迫ってくるものであることを、誰しも感じることでしょう。それを可能にしたのが、何十年経っても合唱の持つ力を信じ続けている人たちと、それを最大限に発揮できるように準備をした卓越した指導力を持つスタッフです。「世界初演」となった合唱曲を提供した森・安野という「作家チーム」の力も忘れることは出来ません。ステージ写真からは想像も出来ないような若々しい声の中からは、確かに合唱の持つ限りない可能性を追求する迷いのない「心」が伝わってきます。
全く保証は出来ませんが、このCDを聴いてみたいと思われた方は、こちらから連絡を取れば、運が良ければ入手できるかも知れません。
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by jurassic_oyaji | 2006-08-23 20:37 | 合唱 | Comments(0)