おやぢの部屋2
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The Liverpool Manuscripts
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Martin Dagenais/
The Schola Musica
XXI-21/XXI-CD2 1421



「イギリスの港町リバプールから約30マイルほど離れた鄙びた村に、12世紀に建てられたという由緒ある修道院がある。そこでごく最近発見された『リバプール写本』は、音楽界に大きな衝撃を与えるものだった。そこに記された単旋律の宗教的な聖歌は、『ファーザー・ジョン』、『ファーザー・ポール』、そして『ブラザー・ジョージ』という3人の修道僧の作ったものなのだが、なんと、前世紀のヒットメーカー『ザ・ビートルズ』の曲に酷似しているではないか(歌詞までも)。つまり、彼らはなにかの機会にこの写本を手にする機会があり、それを曲に反映させたのではないか、という推論が成り立つ。ただ、この写本には『宗教的』な曲しか含まれていないことから、彼らの多くの『世俗的』なラブソングは、おそらくオリジナルのものではないかとも推測されている。」
・・・などというライナーノーツ(意訳)が掲載されている、まるでP.D.Q.バッハ」のような周到な仕掛けが施された楽しいアルバムを見つけました。もうお分かりでしょうが、これはビートルズの曲をグレゴリオ聖歌っぽく演奏したものです。それだけでも十分面白いアイディアなのですが、さらにそれをいかにも最初からあったのは聖歌の方だった、みたいに見せかけようとしている姿勢が、たまらなく素敵です。「修道院の高僧は、『ブラザー・ジョージ』には、東洋哲学からの影響を極力避けるように、忠告をした」などという「解説」は、もろにファンのツボを刺激してしまうことでしょう(と言いながら、「Within You Without You」なんかも収録しているのですから、笑えます)。ついでに言えば、この3人の修道僧は、それぞれ「レン」、「マック」、「ハリー」と言う別の名前で、もう一人「召使いリチャード」を加え「ロンリー・ハーツ・ミンストレルズ」というバンドを結成し、異教徒のお祭りで「世俗的」な歌を演奏していたというのです。彼らの曲の自筆稿は残っていないため、音楽学者たちは、それらとビートルズのラブソングとの関連をつかむことは出来ないのだそうです。どこまでも人を食った解説ですね。つまり、「Octopus's Garden」は「世俗曲」だったと。
これらの「聖歌」、それこそ修道院のようなところで録音されているせいか、びしょびしょのエコーがかかっていて、それだけで敬虔な思いにさせられてしまいます。ほとんど、原曲そのままのメロディーがユニゾンで歌われているのですが、ほんのちょっとした「グレゴリアン」っぽい装飾が施されるだけで、見事にそれらしく聞こえてくるのは見事です。さっきのジョージの曲など、そのインド風の旋法が、中世の雰囲気と不思議なマッチングを見せているのですから、たまりません。逆に「All You Need Is Love」では、この同じ歌詞が繰り返されるフックでの3回目の半音進行が、妙に「20世紀」っぽくて、完全にバレてしまっているあたりが、ちょっとした誤算、と言うか「確信犯」でしょうか。
オリジナルよりも、曲の精神を伝えることに成功しているのではないかと思われるほどの「Let It Be」の「詠唱」が終わったあとに、本物のグレゴリオ聖歌のようなものが聞こえてきました。歌詞もラテン語みたい。そもそもアルバムの始まりが鐘の音でしたから、締めくくりとしてここには「本物」を持ってきたのかも知れない、と、曲目を見てみたら、それは「The End」、あの「Abbey Road」の「B面組曲」の最後を飾る曲でした(本当の最後は、隠しトラックの「Her Majesty」ですが)。これにはすっかり騙されました。考えてみれば、Abbey=修道院ですものね。この曲についてのライナーの解説は、「1ページしか発見されていないので、もっと長い曲の一部であるかどうかは分かっていない」という、すっかりなりきったスタンス、全ての曲がこの調子でコメントされているのには恐れ入ってしまいます。
しかし、ここまでやっておきながら、ライナーの冒頭でしっかりネタバレを披露しているのが、ちょっとがっかりです。そこまで徹底されていれば、ピーター・シックリー以上のアブないものが出来ていたことでしょう。もちろん、そのためにはアルバムタイトルからもこのレビューのように「The Beatles」自身を外さなければならなくなってくるわけで、そうなると誰も買う人はいなくなってしまいますが。
同じ時期に同じ場所でこのアルバムを見つけたであろう山尾敦史さんのブログでも紹介されています。ご参照下さい。
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by jurassic_oyaji | 2006-09-03 19:45 | ポップス | Comments(0)