おやぢの部屋2
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Music for Two Pianos


Friedrich Gulda(Pf)
Joe Zawinul(Pf)
Jerry van Rooyen/
WDR Big Band Köln
CAPRICCIO/67 175



2000年に亡くなったピアニスト、フリードリッヒ・グルダが、ジャズピアニスト、ジョー・ザヴィヌルと共演した1988年のコンサートの放送音源が、CDとして発表されました。グルダと言えば、「クラシック」のピアニストとしては、かなり「はじけた」ところのある人として知られていましたね。若い頃に録音したモーツァルトのピアノソナタなどは、そのあまりの即興性の勝った演奏に眉をひそめる人は多かったものです。今となっては、例えばこの間のレヴィンのように、この曲に自由な装飾を施して演奏するのはほとんど「常識」となっていますが、その当時はそんな勝手気ままな演奏は決して認められることではなかったのですね。そんな、はるかに時代を先取りした演奏を実践していたグルダですから、「クラシック」の枠の中に収まりきるはずもありません。本格的に「ジャズ」へのアプローチを追求した彼は、独特のスタイルでそのジャンルでも名声を博することとなるのです。
ここで共演しているジョー・ザヴィヌルは、もちろん、あの革新的なジャズグループ(「フュージョン」と言うべきでしょうか)「ウェザー・リポート」のリーダーとして知らないものはないというジャズピアニストですが、実は彼はウィーン生まれのオーストリア人、本名は「ヨーゼフ・ザヴィヌル」と言うのだそうですね。初めて知りました。しかも、ウィーン音楽大学でピアノを学ぶという、キャリアのスタート時点では紛れもない「クラシック」ピアニストだったのですね。キリスト教を伝えたりはしませんでしたが(それは「ザヴィエル」)。
ですから、このアルバムの最初に収録されているのが、バリバリの「クラシック」である、ブラームスの「ハイドン・ヴァリエーション」であっても、なんの不思議もないわけです。言ってみれば、この曲目で2人のピアニストのルーツを確かめ合うという趣でしょうか。しかし、もちろん、素直にそんなことをするはずもありません。いきなり聞こえてきたのは、内部のピアノ線を直接手で弾くような奏法も含めたインプロヴィゼーションだったのですから。一体何が始まったのかと思っているうちに、あの有名なテーマが現れてくるのは、かなりスリリングなものでした。この2台のピアノは、音色もセンスも、全く異なったもののように聞こえます。おそらく右から聞こえるピアノがグルダで、左がザヴィヌルなのでしょう。ザヴィヌルの方が、どちらかといえばおとなしめ、きちんと楽譜通りに弾いているのに対し、グルダはかなり鋭い音で、テーマが始まってもちょっとした「おかず」を加えたりしているのが、面白いところです。ある意味、「クラシック」を極めた人の「恥じらい」のようなものを、そこには感じることが出来ます。
2曲目は、グルダの作品で「2台のピアノとバンドのための変奏曲」です。「変奏曲」というよりは、まるで「アレグロ-スケルツォ-アダージョ-アレグロ」みたいな4楽章からなるシンフォニーのような構成を取っているのが、ちょっとクラシックっぽいところですが、肌合いはあくまでジャズ、ビッグ・バンドをバックに2台ピアノのソロが展開されるというものです。最初にテーマを提示するザヴィヌルの温かい音色が素敵、ビートが入ってソロがグルダに変わると、全く異なる世界が広がります。そんな風に、きちんと書き込まれたバンドの間を縫って、全く肌合いの違う2人のソロを味わうのが、この曲の醍醐味でしょう。「第1楽章」から「第2楽章」に移る瞬間のテンポチェンジが聞きものです。「第3楽章」でのリリカルなソロを聞き比べるのも、たまらないもののはず。このバンドはドラムスにメル・ルイスが参加しているという、結構すごいもの、ノリの良いバックも存分に味わって頂きましょう。
盛大な拍手に応えての「アンコール」という形で演奏されたのが、「ウェザー・リポート」の1981年の同名のアルバムの冒頭を飾る「Volcano for Hire」です。カティア・ラヴェックとのコンサートでもやはりこの曲を披露したといいますから、これはザヴィヌルにとってはお約束、おいしいところをグルダに任せて、一歩下がって絡むあたりが、素敵です。
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by jurassic_oyaji | 2006-09-12 23:30 | ピアノ | Comments(0)