おやぢの部屋2
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Souvenirs aus Tokio





Die Peanuts
BEAR FAMILY/BCD 16436 AH



ちょっと前のことですが、テレビで往年のスター、「ザ・ピーナッツ」の特集を放送していました。1959年にデビューした双子の姉妹デュオ、1975年に引退するまでに、数々のヒットを放ち、それらはほとんどスタンダードとして今でも歌い継がれています。「恋のバカンス」とか、「ウナ・セラ・ディ東京」なんて、大好きです。
その番組では、ピーナッツがドイツで発売するためのレコードをドイツで録音している姿が紹介されていました。そんなことがあったなんて、初めて知りましたよ。これはちょっとすごいことではないでしょうか。当時は、日本のポップス界はオリジナルよりは、外国のヒット曲のカバーに甘んじていた時代でした。ですから、彼女らもまずヨーロッパでのヒット曲「情熱の花」のカバーで人気を博することになりました。そのオリジナル(といっても、もちろん元ネタはベートーヴェンの「エリーゼのため」ですが)を歌っていたカテリーナ・ヴァレンテが1963年に来日すれば、当然ピーナッツも同じ歌で共演することになるのです。そこでヴァレンテの目にとまった彼女らは、翌年にはドイツに渡ってテレビに出演したり、レコードを録音したりという話が、トントン拍子に広がっていったということなのですね。番組によると、そのレコードはドイツだけでなく、ヨーロッパ各国でかなりヒットしたということです(これが日本で発売された形跡はないようです)。そして、その録音をまとめてCD化したものが3年前にドイツで発売されている、というではありませんか。そこで、さっそく取り寄せたのが、このアルバムです。「Die Peanuts」というのがいいですね。この「Die」は女性名詞ではなく、複数の定冠詞なのでしょうね。
ライナーのデータによると、彼女らは、1964年から1967年にかけて、ドイツのEMIであるエレクトローラのスタジオで5回のセッションをもち、16曲、シングル盤8枚分の録音を行っています。作詞、作曲はもちろんドイツの人、ほとんどの曲を書いたハインツ・キースリングが指揮をするバンドとコーラスが、バックを務めています。「トーキョー」、「ナガサキ」、「フジヤマ(ドイツ語だとFudschijama)」などの「ニホンゴ」がフィーチャーされたタイトルを見ると、「いかにも」という感じがしてしまうのですが、実際にその音を聴いた時に、そんな先入観は見事に吹き飛んでしまいましたよ。そこにあったものは、当時最高レベルにあったドイツのポップス界の才能が、全てのノウハウを注ぎ込んで作り上げた極上のサウンドだったのです。ウェルナー・ミューラーあたりの流れでしょうか、腰の据わったタイトなリズムに支えられて、彼女らの歌声は見事に全世界に通用するほどの魅力を振りまいています。そう、これはまさに日本人による「洋楽」だったのです。
どの曲も当時のヒット曲の王道を行くリズミカルでポップな仕上がり、中でも一番のお気に入りは、番組でも紹介されていた「フジヤマ・ムーン」でしょうか。いかにも「東洋的」なイントロは、決して物珍しさだけに終わらない、確かな効果を上げるもの、そのあとに続くかっこいいコード進行は、まさに「一級品」のたたずまいです。

軽やかなビートに乗って、彼女らのハーモニーはさえ渡ります。それは、日本でのヒット曲(つまり「邦楽」)を歌う時のちょっと湿った情緒とは全く無縁の、カラッと乾ききった爽やかなものです。彼女らの全く別の魅力が、こんな風にドイツで花開いていたことを知って、なにか幸せな気持ちになれました。歌詞はもちろんドイツ語、ちょっと拙いその発音も、けなげさを誘うものです。
このアルバムの後半には、カテリーナ・ヴァレンテとの共演で、ドイツと日本の愛唱歌を歌い合う、などというとんでもないものも収録されています。ドイツ民謡の「おお可愛いアウグスティン」と「浜辺の歌」を同時に歌わせるというアレンジもすごいものですが、そんな時のピーナッツは、とても楽しんでいるように聞こえます。
ただ、これだけの音源を集めたのですから、データをもっときちんと押さえてほしかったという気持ちは残ります。明らかに日本のキングレコードで録音されたものもあるのですが、それがどれなのかはここからは分かりません。後半の「センチメンタル・ジャーニー」あたりのノリの悪さは、ドイツ録音のものとは別物のような気がしてなりません(この曲は、どいつが録ったんだ!)。
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by jurassic_oyaji | 2006-09-14 19:44 | ポップス | Comments(0)