おやぢの部屋2
jurassic.exblog.jp
ブログトップ
Turandot
 この前、WOWOWで「トゥーランドット」をやっていました。と言っても、もちろんこの局ですから、オペラの舞台を放送していたわけではありません(昔は結構やっていたものですが。全く出演者のコメントのない「シチリア島」とか)。原題を「The Turandot Project」という、ドキュメンタリー映画です。だいぶ前にメータの指揮するこのオペラを、北京の紫禁城で上演するという噂を聞いたことがありますが、その時の模様を記録したものだったのですね。
 映画は、その前段階、フィレンツェで、中国の映画監督、チャン・イーモウが演出を手がけるプロダクションの模様が描かれます。この監督を指名したのはメータ、もちろんその時には紫禁城での上演も計画されていましたから、中国人にアピールするための人選だったのでしょう。ただ、同じ演出とはいっても映画とオペラとでは全く異なる能力が必要となってくるのは当然のこと、このあたりではこの監督の無能な面だけが強調される撮り方になっています。なにやら、瓦屋根みたいなものを合唱団に持たせるというのも、アイディア倒れになっているような違和感しかありません。中でもおかしかったのは、リューがトゥーランドットの髪に刺してあったかんざしを引き抜いて、それで喉を突いて自殺するというアイディアです。しきりと、これは中国人にしか思いつかない発想だ、みたいなことを言っていましたが、ちょっとこれは・・・という気がします。もっとも、紹介されていたのは断片的なシーンだけですから、きちんと連続した舞台を見れば、それなりの必然性を感じられるのかも知れませんが。
 そして、その後、いよいよ北京での野外上演の模様です。フィレンツェのものをそのまま持っていくのだと思ったら、衣装も演出プランも、全く別のものになっていたのですね。野外、しかもそもそもオペラの上演には不向きな建物の前で行うわけですから、それも当然のことでしょう。こちらの方は階段に合唱団を配置したり、軍隊を動員して群衆を沢山用意したりと、とんでもなく大がかりなステージとなっています。そして、ここで中国人の監督は、異常なまでの張り切り方を見せることになるのです。世界中の人が見に来るプロジェクトですから、大いに母国中国をアピールしようというのです。セットを動かすスタッフに向かって「きっかけが遅れれば中国が笑われる」と、檄を飛ばす始末です。
 その流れで、この映画の中での最大のクライマックス、その監督と、照明監督のイタリア人との対決が描かれます。イタリア人の用意した照明プランに、監督は不満を隠せません。「もっと明るくないと、せっかく作った中国の衣装が引き立たない」と。しかし、イタリア人はあくまで芸術的な見地から、彼の照明にこだわります。最終的に渋々イタリア人は明るくすることに同意するのですが、裏へ回ってのインタビューでの監督への憎悪には、とことん厳しいものがありました。ところが、雨が降ったためにリハーサルが流れてしまい、結局テストが出来ないので照明はもとのままでやるとなったときの、このイタリア人の「してやったり」という表情は見物でした。それに対して監督の何とも悔しくてしょうがない様子は、まるでこの監督の人間性まであらわしているようなものでした。
 映画では、オペラの最後のシーンをクライマックスに用いていましたが、それは「Nessun dorma」の大盛り上がりで終わっているのですね。アルファーノ版というのは、こういうものだと始めて知りました。なにしろ、私が見たDVDでは、このエンディングはベリオ版のもっと上品な終わり方でしたから。この監督は、もちろんベリオ版なんて絶対使わないはずです。
[PR]
by jurassic_oyaji | 2006-09-15 20:03 | 禁断 | Comments(0)