おやぢの部屋2
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PAGANINI, SPOHR/Violin Concertos

Hilary Hahn(Vn)
大植英次/
Swedish Radio Orchestra
DG/00289 477 6232
(輸入盤)
ユニバーサル・ミュージック
/UCCG-1333(国内盤 1025日発売予定)


ジャケットのハーン、いつもながらおっかない顔をして写っていますが、でも、何だかずいぶん「丸み」のようなものが出てきたような感じがしませんか?
このアルバムでは、これだけではなく、彼女の写真があちこちに載っていますが例えばブックレットの裏表紙のものは髪を下ろして、ちょっとサンドラ・ブロックのように見えないこともありません(これって、褒めてることにならない?)。そして、インレイには横顔のアングルでちょっと寂しげな表情のものがあるのですが、それが「音楽を忘れるなーっ!」の「あおいちゃん」そっくり。「純情ひらり」ですね。
そんな、ちょっとソフトなイメージが感じられるようになった彼女が、パガニーニです。ちょっと前までは、こんな、ロマンティシズム満載の、言ってみれば「陳腐」な曲を彼女が手がけること自体、あり得ないと思えたものですが、いえいえ、ここではその外見同様、なにか包容力さえ感じられる素晴らしい演奏を聴かせてくれていますよ。
なにしろ、超絶技巧満載の曲ですから、思い切り速いテンポでバリバリ弾きまくるのだろうという予想を見事に裏切って、彼女は実にしっとりとしたテンポで弾き始めましたよ。これだと、パガニーニが書いたどんな難しいパッセージでも、その中にはことごとく美しい「歌」が潜んでいることが判ります。その様な、ある意味クレバーさをこの曲に与えたのは、指揮者の大植英次の手腕も大きく貢献しているはずです。ハーンの意図を完璧に汲みとったそのサポートぶりには敬服させられます。実はこの1番の協奏曲、最初から最後まで(ゆっくりした第2楽章ですら)シンバルと大太鼓という、一歩間違えると何ともノーテンキなたたずまいを醸し出しかねない打楽器が、盛大に盛り上げています。それで、もちろん、まるで運動会の行進曲のような楽しい演奏になっているものも数多く聴いてきたものなのですが、彼女たちの演奏にはそんな浮ついた雰囲気は全く感じられませんでした。お祭り騒ぎではない、単にビートをキープするというクールさが、その打楽器の扱いにはあったのです。
第2楽章あたりでは、ハーンは意識的に過剰な歌い方を避けているかのように見えます。ことさらベタベタ手を加えなくても、音楽自体の持つ甘さをそのまま味わってもらおうという姿勢でしょうか。そして、それを演出したのも大植です。この楽章の導入での臭すぎるほどの表情付けが、それに続くハーンの冷静なソロを見事に際立たせています。
第3楽章の軽やかなロンドのテーマ、それを彼女は、タイトなリズム帯に乗って小粋に歌い上げてくれます。それと共に、時たま顔を出すフラジオレットによるフレーズのなんとチャーミングなことでしょう。
カップリングのシュポアの協奏曲第8番は、「協奏曲」というほどの重さはない連続した3つの部分から成る曲です。ブリリアントな趣味の「コンチェルティーノ」といった感じでしょうか。第1楽章はほとんど「序奏」という程度のものですが、ここでもパガニーニ同様いかにも大時代的な大げさな身振りは見られない、ソロがオーケストラの間を軽やかに泳ぎ回るといったさりげなさが素敵です。そして、味わい深いのが、第2楽章。大植の絶妙のドライブで、つかず離れずの距離を保ったオーケストラの上を、ハーンのヴァイオリンはあくまで淡々と流れていきます。素晴らしいのは、まるでささやくようなピアニシモ。あたかも耳たぶにそっと息を吹きかけられたような、そのセクシーさはたまりません。この楽章の中間部で、突然いかにもロマン派っぽい一陣の風が吹きすさぶような場面が現れます。ここでの、うってかわって毅然としたハーンの姿も、また魅力的なのは、言うまでもありません。
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by jurassic_oyaji | 2006-09-27 19:43 | ヴァイオリン | Comments(0)