おやぢの部屋2
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McCARTNEY/Ecco Cor Meum

Kate Royal(Sop)
Gavin Greenaway/London Voices
Boys of Magdalen College Choir, Oxford
Boys of King's College Choir, Cambridge
Academy of St Martin in the Fields
EMI/370424 2
(輸入盤)東芝EMI/TOCP-70099(国内盤)


1991年の作品「リバプール・オラトリオ」でクラシック界でも「作曲家」として認知してもらう事を目指したポール・マッカートニー、その路線の4作目となる今回も、「Ecco Cor Meum」というラテン語(「私の心を聞け」、でしょうか)のタイトルを持つ、演奏に1時間を要する大作です。そもそもはオクスフォードのモードレン・カレッジから、新しく建設されるコンサートホールのためにと委嘱されたものだと言いますから、もはやポールはラッターやタヴナーと肩を並べる「クラシック」(その2人をクラシックとは見なさない人もいますが)界の大物作曲者として、完全に認められた事になったのでしょうか。
その委嘱元、モードレン・カレッジと聞いて、こちらを思い出す方はよっぽどのマニアに違いありません。そう、ここの聖歌隊はあのキングス・シンガーズの元メンバー、ビル・アイヴスが音楽監督を務めているのです。ポールは曲の構想を練るにあたって、ビルの指揮するこの聖歌隊の演奏で様々な時代の様々な曲を聴いたということです。ちなみに、彼とポールとは実は「We All Stand Together」という、ポールのイギリスでの35枚目にあたるシングルで共演をしていたのだとか。アニメの主題歌であるこの曲がリリースされたのは1984年、アーティストのクレジットは「Paul McCartney and the Frog Chorus」となっていますが、その「蛙のコーラス」を、キングス・シンガーズが歌っていたのですね。縁というのは不思議なもの、今やこの2人は、いずれもイギリスを代表する現代作曲家ですからね。昔のアイドルにはもうもーどれん
その、モードレン・カレッジの聖歌隊と、もう一つ名門のケンブリッジ・キングス・カレッジ聖歌隊、そして、大人の混声合唱とソプラノソロにオーケストラという編成を持つこの曲は、全部で5つの部分から成っています。第1曲は「Spiritus」。低音の不気味なテーマが弦楽器で奏された後、少年アルトと少年ソプラノがそのテーマでプレーン・チャント風に応答を繰り返します。このあたりはとても神秘的で深遠な雰囲気を醸し出しています。この感じががそのまま最後まで続けばいいのにな、と思っていても、しかし、この作曲家の旺盛なサービス精神は、それを許しません。程なく何の関係もないテーマが出てきて、思い切り華麗に盛り上がる頃には、一体さっきの深さは何だったのか、と思えてくるようになってしまいます。これが、この曲の全体を支配しているある種の「弱さ」、それぞれはとても魅力的な部分ではあるものが、それらが何の脈絡もなくつながっているものですから、全体としてはとても散漫な印象になってしまっているのです。
しかし、そんな中にあって2曲目の「Gratia」だけは、とてもまとまりのある美しさを見せてくれています。これは、基本的に8ビートのバラード、ポールが何の邪心も持たないで彼の本来のグラウンドでの手法を存分に使う事によって、最も自然な形の素直な音楽が出来上がりました。
その次に、「間奏曲」という感じでオーボエソロがメインの短い曲が入ります。「Lament」と題されているように、コーラスのヴォカリーズに乗って、心に染みるオーボエのメロディが流れていきます。もちろんこれはこの曲を作っている途中でガンのためになくなった前妻リンダへの思いが込められたものなのでしょう。
残りの3、4曲目、「Musica」と「Ecco Cor Meum」でも、やはり構成の弱さは隠せません。3曲目などは「対位法」に挑戦したのでしょうか、聴いていて虚しくなるようなその陳腐な音型からは、その技法が本来見せるはずの立体的な音楽など、望むべくもありません。4曲目でも、せっかくの魅力的なテーマが、無理に盛り上げようというつまらない配慮で台無しになっています。後半に出てくるオルガンの凡庸さといったら。
いかにメロディが魅力的でも、1時間という長丁場を持たせるだけの構成力が伴わない限り、真にクラシック・ファンを納得させられるだけの作品を作る事は、彼には難しいはずです。しかし、今さらそんな悪あがきをする必要などさらさら無いように、普通は思うのですが。
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by jurassic_oyaji | 2006-10-02 19:34 | 合唱 | Comments(0)