おやぢの部屋2
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BURGON/Choral Music


Alan Thomas(Tp)
David Bednall(Org)
Matthew Owens/
Wells Cathedral Choir
HYPERION/CDA 67567



ジェフリー・バーゴンという、ウィスキーみたいな名前の(それは「バーボン」)1941年生まれのイギリスの作曲家の作品は、初めて聴きました。若い頃はマイルス・デイヴィスやジョン・コルトレーンがアイドルの「ジャズ少年」だったというバーゴン、彼自身も、トランペッターとして音楽家のキャリアをスタートさせたということで、いわゆる「純音楽」の持つ堅苦しさとは無縁の世界を持っている人のような印象を、このアルバムからも受けることが出来ます。なんでも、ここに収録されている「Nunc dimittis」(タイトルはラテン語ですが、テキストは英語で歌われます)という曲は、1979年にBBCのドラマで使われて、ポップ・チャートのトップ10にランクインしたこともあるそうなのです。余談ですが、UKのチャートというのはアメリカのものとはひと味違っていて、時折とんでもない曲がランクインしてしまうことがあります。ミュージカルの中の曲が入ることはよくあることですし、なによりもNessun Dormaがこれほど有名になったのは、パヴァロッティが歌ったものがチャートインしてしまったせいなのですから。
バーゴンの合唱作品集、ここで目に付くのは、伴奏にオルガンの他にトランペットが頻繁に登場することです。作曲家自身の楽器として、愛着が強いものなのでしょう、その使い方は合唱によく溶け込むものになっています。「Come let us pity not the dead」という最近の曲では、間奏としてしっとりしたトランペットのソロがフィーチャーされていて、その最後のフレーズに柔らかく合唱がかぶさるのがこの上なく美しい仕上がりです。先ほどの「Nunc dimittis」も、オリジナルバージョンは女声合唱とトランペット、オルガンという編成、この穏やかな曲に素敵な彩りを添えています。
実は、この曲は、1997年にア・カペラの混声合唱とソプラノソロが2人という形で新たに編曲されたバージョンもあり、それもここで聴くことが出来ます。メロディーは一緒なのですが、この2曲は全く異なったテイストを与えてくれているのは、彼の場合メロディーそのものにはそれほどインパクトがないせいなのでしょうか。例えばジョン・ラッターのようにキャッチーなメロディーで惹き付けるというよりは、もっと深いところでの共感を呼び覚ますような、不思議な魅力を感じることが出来るのが、このバーゴンの曲であるような気がします。
若い頃の「Short Mass」などは、そんな無愛想な感じが強く残っているものですが、その中からは確かな安らぎを導き出すものを間違いなく感じ取ることが出来るはずです。ちょっと変拍子っぽいオルガンに導かれた難解な肌触りの「Magnificat」も、心の深いところに届く訴えを、間違いなく感じることが出来ます。
そういう意味で、もしかしたら、彼の作品は「ヒーリング」にカテゴライズしてもそれほど見当外れではないのかも知れません。しかし、そこにはただ甘いだけの心地よさではない、もっと心の底をえぐられるようなパトスまでもが存在してはいないでしょうか。
演奏しているウェルズ大聖堂聖歌隊は、トレブルが少年ではなく少女だというところがちょっとユニーク、本来は両方のメンバーがいるのですが、特別な時以外は、どちらか一方が男声隊(「ヴィカーズ・コラール」という名前で独立して活躍しています)と共演しているそうです。ここで少女隊のユニットが聴けたから、バーゴンの魅力もストレートに伝わってきた、という感じがするほど、彼女たちの歌には「少年」には見られない安定感がありました。ソリストもメンバーが担当していますが、それぞれに立派なものを聴かせてくれます。ただ、最も出番の多いキャスリーン・ハートはちょっと暗めの音色、もう一人のフランセス・ヘンダーソンの伸びやかな声の方が、魅力的ですが。
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by jurassic_oyaji | 2006-11-05 20:17 | 合唱 | Comments(0)