おやぢの部屋2
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EETHOVEN/Symphonies 5 & 7



Gustavo Dudamel/
Simón Bolívar Youth Orchestra of Venezuela
DG/00289 477 6228(輸入盤)
ユニバーサル・ミュージック/UCCG-1345(国内盤2/21発売予定)



「誰も寝てはならぬ」に続く、最近のクラシックのヒット曲といえば、なんと言っても「ベト7」、いや、ベートーヴェンの交響曲第7番ではないでしょうか。なにしろ、毎週月曜日の夜9時10分頃には、全国のテレビ保有者の18%以上の人がこの曲を聴いているのですからね。ドラマやCMとのタイアップでヒットした曲は、最新の松たか子の「みんなひとり」(1129日リリース)から、かつてのジェリー・ウォレスの「男の世界」(ふ、古すぎ)まで枚挙にいとまがありませんから、このヘビー・ローテーションに乗って「ベト7」がチャートにランクインする日は間違いなく訪れることでしょう。赤ちゃんも喜びますし(それは「ベビー・ローション」)。いや、現実にはこの曲のクライバー盤がバカ売れしているといいますから、そんな夢のようなことが実現することだってあり得ます。
そんなヒット曲の最新のカバーが(いや、クラシックの場合、全てがカバーです)、2006年2月録音というこのアルバムです。レーベルは老舗のDGですが、アーティストは全く聞いたことのない人ばかり、それもそのはず、これはグスタヴォ・ドゥダメル指揮のシモン・ボリーバル・ユース・オーケストラのデビュー・アルバムだったのです。
そんな名前の人が建国に大きな力を果たした国ベネズエラの、これはアマチュアのユース・オーケストラです。なんでもこの国には「ユース」や、「チルドレン」のオーケストラを支える「FESOJIVFundactión del Estado para el Sistema de Orquesta Juvenil e Infantil de Venezuela ベネズエラの若者と子供のオーケストラのための国家的財団)」というものがあって、国内にはなんと125のユース・オーケストラと57のチルドレン・オーケストラがあるというのです。そんな多くの団体のまさに頂点に立っているのが、この「シモン・ボリーバル」だということになります。ちなみにこの財団の目的は、決してプロの音楽家を育てることではなく、あくまでも「子供達を救う」という一点に集約されています。スラムや路上ですさんだ生活をしている子供達を、音楽の力によって正しい道へ導くという、これはいわば大規模な「更正プログラム」なのです。実際、ライナーではドラッグ漬けになった少年が楽器を与えられて見事に更正したというような「美談」が数多く紹介されています。
そんな少年たちが集まったこのオーケストラは、しかし、その様な「ストーリー」が付いてこなければほとんどなんの価値も認められないようなある意味偽善的な活動の成果とは根本的に異なる高次元の音楽を奏でる能力を、この国の機関によって与えられていました。個人の技量、アンサンブルのセンス、そして指揮者の求めているものを全員が表現する力、それらのものは決してプロの団体と遜色のない、極論すれば先ほどのクライバー盤と同列に語れるほどのものだったのです。そこには、心を一つにして感動的な演奏を産み出した「Sオケ」すらも霞んでしまうほどのグルーヴが込められています。
千秋真一よりは年を食っている、それでもまだ25歳のベネズエラ生まれの指揮者ドゥダメルは、「プラティニ国際指揮者コンクール」と同等のレベルを持つ「マーラー国際指揮者コンクール」で優勝したという逸材、すでに世界へ向けてのポストを着々とものにしている、まさに次世代のホープです。すでに8年間も首席指揮者を務めているこのオーケストラとは、強い信頼関係で結ばれているのでしょう。その演奏にはなんの迷いも感じられません。第1楽章冒頭で明らかになる弦と管との間の強烈なキャラクター設定の落差、一歩間違えば時代遅れの巨匠タイプになってしまうものを、見事にそれぞれの楽器が最も輝くスマートな演奏へと導いています。そして圧巻は終楽章。全てのメンバーの意志が一つの方向へまとめられた強烈なエネルギーは、別にヴァイオリンのネックを持ち上げたり、コントラバスを回したりしなくても得られるということが如実に分かるすさまじいものです。357小節からの(4分54秒あたり)弦楽器の各パートが、同じパターンを次々と重ねていく部分でのスリリングなこといったら、どうでしょう。この瞬間には、もしかしたらクライバー盤をもしのぐ血のたぎりが放出されていたかも知れません。
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by jurassic_oyaji | 2006-11-10 22:19 | オーケストラ | Comments(2)
Commented by hideonoshogai at 2008-06-24 17:18
はじめまして。Dudamel で検索していたら、こちら記事にヒットし、私のところでこちらを引用させていただきました。Dudamel のこと、いろいろ調べれば調べるほど、凄い逸材であることがわかり驚いています。
こちらはCDなどクラッシクの膨大なデータがアップされていて凄いですね。これからも宜しくお願いします。
Commented by jurassic_oyaji at 2008-06-24 22:22
hideonoshogaiさま。リンクありがとうございました。
ドゥダメルは、来年からは、ロス・アンジェルス・フィルの音楽監督に就任しますね。
HNは「英雄の生涯」ですね。