おやぢの部屋2
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LOVE



The Beatles
APPLE/381598 2
(ヨーロッパ盤)
APPLE/379808 2
(US盤)
東芝
EMI/TOCP-70200(国内盤)


ビートルズの「新譜」です。もちろん、あの伝説的なロックグループのメンバーのうちの半数はすでに他界していますから、いくら高いお金をかけたとしても新たにセッションを組んでレコーディングを行うなどということは不可能です。これは、そのグループのプロデューサーであったジョージ・マーティン(まだご存命です)と、その息子ジャイルズ・マーティンが、「もし、4人が今集まったらこんな演奏をするんじゃないか」という想定で、マスターテープを再構成して作り上げたものなのです。そもそもは、「シルク・ドゥ・ソレイユ」のショーのサントラとして依頼されたプロジェクトだったものですが、もちろんそんなおいしい話をレコード会社がほおっておくわけはありませんから、こんな形で全世界同時発売という「新譜」が誕生してしまいました。
これは通常のCDですが、同時にサラウンドチャンネルが収録されたDVDオーディオも同梱されたパッケージも発売になっています。普通の感覚ではハイブリッドSACDにすれば良いのでは、と思うのでしょうが、なぜかこのメーカーはCCCD(おぼえてます?)には非常に熱心に取り組んだというのに、SACDについては全く消極的な態度をとり続けているものですから、こんな形にせざるを得なかったのでしょう。
1999年にリリースされたYellow Submarine Songtrackを聴いたときには、デジタル・プロセシングによって修復されたその生々しい音に驚かされたものでした。マスターテープが持っていた以上のクオリティを、この技術では獲得できることを、その時知ったのです。今回もその技術は惜しげもなく使われており、今まで聴き慣れた、ちょっと古めかしい音が、まるで録音されたばかりのようなみずみずしいものに蘇って耳に届きます。小鳥のさえずりの中から聞こえてきたア・カペラの「Because」が、そんなサプライズの始まり、それから7853秒の間、私たちは絶対に40年近く前に録音されたものとは思えないほどの芳醇なビートルズのサウンドを楽しむことになるのです。
続いて「A Hard Day's Night」の頭のコードのあとにいきなり聞こえて来たのが、「Abbey Road」の中で「The End」のイントロとしてリンゴが演奏しているドラムソロです。それがそのまま「Get Back」につながってしまうという、見事な編集、そんな具合にいろいろな曲、場合によってはそのパーツ(トラック)までも自由に入れ替えたものが披露されます。ポールのアコギのソロが、「Blackbird」のイントロだと思って聴いていたら、ヴォーカルが入った時にはいつの間にか「Yesterday」になっていたとか、楽しみは尽きません。圧巻は「Strawberry Fields Forever」、後半に出てくるは出てくるは、色んな曲からの「パーツ」が。「In My Life」に挿入されているジョージ・マーティン自身のピアノソロなどはすぐ分かりますが、これの出所が全部分かった人はかなりのマニアでしょうね。
このプロジェクト、始まったのは5年前で、当時は存命だったジョージ・ハリスンと「シルク」との間のディスカッションが発端だとか。そのせいか、この中にはジョージのヒット曲が網羅されているのが嬉しいところです。中でも、「While My Guitar Gently Weeps」は、ジョージのヴォーカルだけを残して、全く新たに録音された流れるようなストリングスのオケが入るというアレンジになっています。オリジナルは結構タイトなリズムに支配されていたものが、こんな形になると全く別の魅力が感じられます。いや、これこそがジョージが本来作りたかった世界ではなかったかと思えるほど、そのオケに乗った彼の声は心に染みるものです。告白すれば、これを聴いて涙があふれてくるのをこらえることが出来ませんでした。
その様な、いろいろ手を加えられている部分もありますが、殆どオリジナルを忠実なまま、ただ音だけが見違えるように新鮮になったものにこそ、最大の魅力を感じられるのはなぜでしょう。ここで嫌と言うほど知らされることになった「プロ・ツールズ」によるデジタル・プロセシングの威力、これを駆使して、ビートルズの全てのオリジナルアルバムが蘇る日こそが、このプロジェクトの本当の到達点なのではないでしょうか。
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by jurassic_oyaji | 2006-11-22 23:36 | ポップス | Comments(0)