おやぢの部屋2
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WAGNER/Das Rheingold



John Bröcheler(Wotan), Henk Smit(Alberich)
Graham Clark(Mime), Reinhild Runkel(Fricka)
Chris Merrit(Loge), Anne Gjevang(Erda)
Pierre Audi(Dir)
Hartmut Haenchen/
Residentie Orchestra
OPUS ARTE/OA 0946 D(DVD)



「リング」全曲のDVDが、まとめて買うとなんと8000円程度で手に入るというものすごいことが起こっています。CDではありませんよ(CDでしたら、もっと安いものもありますが)。れっきとしたサラウンドチャンネル付きのDVD、しかも、このレーベルにしては本当に珍しい日本語字幕付きというのですから、これはもう買うしかないでしょう。
1999年、ネーデルランド・オペラのプロダクション、グレアム・クラークやクリス・メリット以外には、それほど有名な人が歌っているわけでもありませんが、演出はとても手のかかった、それでいて非常に分かりやすいものですから、存分に楽しめます。衣装が日本人の石岡瑛子さんというのも、親近感のあるもの、事実、彼女の衣装プランは我々にとって非常に親しみやすいものとなっていますから、それを味わうのも楽しいことです。なにしろ、神々族はまるで仏像のようなヒダの入った衣を着ているのですからね。それで、頭は螺髪ときてますから、フリッカなどはほとんど鎌倉の大仏様です。フライアは、まさに興福寺の阿修羅像。ただ、ローゲ(クリス・メリットが演じています)だけはスキンヘッドというのは、彼が正規の神々ではないことの分かりやすい現れなのでしょう。そうなると、○ンタマ丸出しの巨人族は、まるで木彫りの仁王様のように見えてくるから不思議です(そ、「メンタマ」を剥いてます)。
ピエール・アウディの演出プランそのものは、非常に素直なものです。エクストラ・フィーチャーのインタビューでは、「もう『リング』の演出は出尽くしたので、いっそ、何もやらないことも考えた」と言っているぐらいですから、基本的にはヴァーグナーのト書きに忠実に、ということを考えたのでしょう。しかし、それと共に、お客さんに楽しんでもらおうというサービス精神も旺盛だったようで、出来上がったその舞台は何とも大仕掛けでスペクタクルなものになりました。
このカンパニーは、座付きのオーケストラは持ってはいませんから、演目ごとに別のオーケストラが演奏するという変則的なことを行っています。「リング」では3つのオーケストラが参加、この「ライン」ではハーグ・レジデンティ管弦楽団が担当しています。特徴的なのは、そのオーケストラが殆どステージの上ぐらいの高い所まで上がってきているという点です。一応ピットの中なのですが、その床がかなり高くなっていて、指揮者の腰のあたりがステージ面となっているのです。そして、ステージはそのオーケストラと客席の間にも設けられていて、場合によっては歌手はオーケストラを背中にして歌うこともあります。
その様な配置では、オーケストラのパートが実に鮮明に聞こえてきますから、指揮者のヘンヒェンもそれを意識してか、とても繊細な、場合によってはちょっとヴァーグナーらしくない緻密な音楽を聴かせてくれています。それこそバイロイトではありませんが、穴蔵の中から不気味に響いてくるようなサウンドとは全く無縁の、隅々まで見渡せられるような、かなり新鮮な響きです。例えば、ヴォータンとローゲがニーベルハイムへ降りていく場面で演奏される間奏曲では、普通は「鍛冶屋のテーマ」が本物の金床などを使ってにぎにぎしく鳴り渡るものですが、ヘンヒェンはいくつかの異なる打楽器で別々のリズムを叩かせるというクレバーなことを披露してくれています。このステージでは、指揮者とオーケストラが常に観客の視界の中にあります。まず、音楽としての「リング」をきちんと聴いて欲しい、そんな演出家と指揮者の願いが伝わってくるようなステージ配置、そして、音楽の作り方です。
そんなオーケストラのまわりで、物語はまるでサーカスのような派手な装置と動きの中で進んでいきます。第1場では、格子が組まれた上の巨大なアクリル板が斜めに立てかけられているのが水の中、実際の「ツルツル感」を味わわせてくれながら、乙女達とアルベリッヒがじゃれ合います。その乙女、ぴったりとボディラインを見せる衣装が、まさに「魚」そのものです。フロスヒルデはかなり○ブ、そんな体型もしっかり見えてしまいます。
後半では、本物の火を使って、ニーベルハイムの喧噪が描かれます。その炎は照明と共に完璧にコントロールされていて、「隠れずきん」のシーンなど圧倒されてしまいます。最後にドンナーがハンマーを振り下ろす所も、見事に火花の爆音とシンクロさせていました。
あれこれ深読みしなくても、素直に楽しめる演出、この先も楽しみです。
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by jurassic_oyaji | 2006-12-01 20:10 | オペラ | Comments(0)