おやぢの部屋2
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Wir setzen uns mit Tränen nieder
 R☆Sオケはもうおしまいですか。これが言ってみればクライマックスのはずなのですから、もっと時間をかけてていねいに描いて欲しかったという思いは残ります。結論を急ぎすぎ、なぜのだめがあれほどの涙を流さなければならないのか、その伏線が十分ではありませんでした。まあ、こんな風に「結論」をいきなり持ってきて「感動」をもぎ取る、というのはテレビドラマ、いや、ハリウッドの映画でも常套手段ではありますが。そうなってくると、少なくともこのシーンでは、マンガの方が表現手段として勝っている、ということになるのではないでしょうか。
 このドラマ、実際に音楽を演奏するというシーンが非常に重要な要素になっていますから、当然その時の音楽はその場では主人公になっているわけです。そこで、難しくなってくるのがBGMの使い方です。それ専用の曲が用意されている場合には問題にならないものが、ここでのウリである「クラシック音楽のBGM」というところで、ヘタをするとBGMがBGMではなくなってしまい、あたかも主人公のように振る舞ってしまうことがあるからです。今回の、コンサートが始まる前に流れていた「ボレロ」が、まさにそんな大失敗の実例に他なりません。本物のオーケストラが画面に現れている所でオーケストラの曲を流したときには、もはやそれはBGMとしてとらえてもらうことは不可能になってきます。このシーンで、緊張感を盛り上げるという効果をねらってこの曲を選んだスタッフは、その時点でクラシックファンの心をまるで分かっていないことを露呈したのです。
 ミシェル・ルグランの「シェルブールの雨傘」は、その逆の意味での失敗作です。あの場合は、「主人公」として聞こえてこなければならない音楽が、単なるBGMにしか聞こえなかったのですから。
 そんな前半の失態も、後半、催眠術の場面に出てきた「マタイ」の終曲と、バーバーの「アダージョ」で、すっかり帳消しになりました。「マタイ」は、その少し前にイントロだけ出てきて、ついにバッハか、と喜んだら(あ、「小フーガ」がありましたね)ここでしっかり合唱までやってくれたのですから、感激です。そして、それに続けてバーバーとは。こういう、人間の心の深い所を描写しているシーンでのこういう曲は、まさにうってつけ、というか、こういう言葉や映像では表せない情感を表現するためにこそ、クラシック音楽はその資質を高めてきたわけですからね。さらに、これが既存の音源であったことも、その深みを誇れた要因でしょう。その前に「ブラ1」のとことんいい加減なドラマのためのセッション音源を聴いてしまったあとだから、その違いは際立ちます。冒頭のティンパニのかったるいこと、最後のあたりも弦のアンサンブルはめちゃめちゃ、それでいてわざとらしい「決め」だけはしっかり付けているというあざとさだけが目立つ、つまらない演奏でした。
 そういえば、だいぶ前に「ブラ1」のアンコールでバーバーを聴いたことがありました。その時のバーバーも素晴らしいものでしたが、今回の方がより素晴らしく聞こえたのは、「メイン」があまりにお粗末だったせいで対比が際立ったからなのでしょうね。
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by jurassic_oyaji | 2006-12-04 23:02 | 禁断 | Comments(3)
Commented by tetsuwanco at 2006-12-04 23:32
まったくの同感です。笑っちゃうほど(笑)
Commented by nobita at 2007-08-25 12:12 x
今更な時期ですが、拝見してうれしくなったので初めてコメントいたします。マタイからバーバーはいいけどボレロは大失敗、まったくの同感です。ああいう場面でバーバーを使うのは目新しさはないけど的を得ていると思いました。比べて、耳がモーツァルト・モードになっているところにボレロのクライマックスは、当時テレビで見ていてなんてデリカシーがないのだろうと思ってしまいました。個人的にはよくできたドラマだったと思っていますが、唯一強い違和感を感じたところでした。オンエアでは、モーツァルトの前にCMが入ったので救われました。しかしDVD化されてCMがないにもかかわらず、モーツァルトの直前にラヴェルのクライマックス、このBGMは本当に差し替えてほしかったです。アランフェス協奏曲のように画面とフィットしている曲が差し替えられていて、なぜボレロがそのままか?と。おおむね良心的なドラマだったとは思いつつも、ボレロに関しては「クラシックファンの心をまるで分かっていない」にまったく同感しました。
Commented by jurassic_oyaji at 2007-08-25 20:48
nobitaさん、「今更」のコメント、ありがとうございます。だいぶ前のことなので、私自身も一体どんなシーンだったのか忘れているほどですが、共感して頂いて嬉しく思います。