おやぢの部屋2
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Bridge across the Pyrenees



Sharon Bezaly(Fl)
John Neschling/
São Paulo Symphony Orchestra
BIS/BIS-SACD-1559



「ピレネー山脈を横切る橋」というしゃれたタイトルが付けられた、シャロン・ベザリーの最新アルバムです。もちろん、それはフランスとスペインの間に横たわる山脈の事ですから、文字通りここにはその2つの国の作曲家による作品が収められています。「パストラル協奏曲」のロドリーゴはスペイン、「フルート協奏曲」のイベールはフランス、そして、「カルメン幻想曲」の作曲者ボルヌはフランスですが、その素材となった物語はスペインが舞台というわけですね。それだけに留まらず、このアルバムの演奏家は「大西洋」まで横切ってしまいました。イスラエルに生まれ、現在はスウェーデンに住んでいるはずのベザリーは、南アメリカ、ブラジルのサンパウロで、その町のオーケストラと一緒にレコーディングを行ったのですから。
そう、ここでは、以前ベートーヴェンでちょっとしたカルチャー・ショックを与えてくれたネシュリング指揮のサンパウロ交響楽団が、ベザリーのバックを務めているのです。あれほどの「ラテン魂」を見せてくれたこのコンビが、スペインのロドリーゴではどれほど弾けてくれるか、楽しみです。
ところが、その「パストラル協奏曲」では、このオーケストラはちょっと醒めていました。実は、ベザリーがこの曲を演奏するコンサートに行った事があるのですが、彼女は冒頭の超絶技巧のパッセージを吹き終わったあと、オーケストラが和やかなテーマを演奏している間、まるでダンスをしているように軽やかに体を動かしていたのです。しかし、そんな浮き立つような感じは、ここからはまるで聞こえてはきませんでした。スペインとブラジルとでは、微妙にノリが違うのでしょうか。
と、幾分失望モードになったとき、次の「カルメン幻想曲」が始まりました。いきなり目の前に広がるその明るさといったら、どうでしょう。その前の曲とはソリストとのバランスも全く変わってしまい、オーケストラがもろ前面に出てきていますし、何よりもいきなりタンバリンやティンパニが、それこそラテンパーカッションのノリで大騒ぎを始めましたよ。この曲はピアノ伴奏がオリジナルの形なのでしょうが、それをオーケストラ用に編曲したジャンカルロ・キアラメッロという人は、例えばゴールウェイの録音の時に編曲を担当したチャールズ・ゲルハルトのようなまっとうなオーケストレーションではなく、とことん派手で手の込んだ伴奏を用意してくれていたのです。
「運命の動機」というのでしょうか、ソロが低音で暗く迫るゆったりとした部分では、普通は「ジャン、ジャン」という重苦しい合いの手が入るものですが、それがいともノーテンキな金管によって奏されると、なんだか体全体の力が抜ける思いです。ソロにバスクラリネットあたりがユニゾンで絡んでくれば、その脱力感はさらに募ります。その部分の最後でのティンパニのロールのすさまじさ。一体何を考えているのでしょう。
「ハバネラ」では、もちろんカスタネットが大活躍、しかし、その背後ではタムタムが加わって、なにやら東洋風の趣も。そして、最後の変奏では、なんとチューバがテーマを吹き出しますよ。これには、思い切り吹き出してしまいました。まさにリオのカーニバルではありませんか。「ジプシーの歌」になると、フルートの十六分音符の嵐にオーボエが負けじとバトルを仕掛けてきて、火花を散らします。「闘牛士の歌」になれば、ピッコロやらシンバルが加わり、まさに運動会のマーチの様相、これ以上はないという賑やかさの中に、エンディングを迎えるのです。
こんな面白い音楽が出来るというのに、イベールの協奏曲ではまたもとのよそよそしい姿に戻ってしまいました。傷は全くないにもかかわらず、心を躍らせるものもないという、スルッとしたいつものベザリーの姿が、そこにはありました。
余談ですが、彼女のこのレーベルに於ける「前任者」であったマヌエル・ヴィースラーは、Bridges to Japanというタイトルのアルバムを最後にレーベルを去っています。いくら似たようなタイトルだとしても、ベザリーにはその様な事はあり得ないでしょうが。
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by jurassic_oyaji | 2006-12-08 08:08 | フルート | Comments(0)