おやぢの部屋2
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MOZART/Die Entführung aus dem Serail



Laura Aikin(Konstanze), Valentina Farcas(Bonde)
Charles Castronovo(Belmonte), Franz
Hawlata(Osmin)
Dieter Kerschbaum(Pedrillo)
Stefan Herheim(Dir)
Ivor Bolton/
Mozarteum Orchester Salzburg
DECCA/00440 074 3156



とりあえず国内盤が出ているものを優先させることにして、「M22」のレビューの第2弾は「後宮」にしました。もちろん、私が購入したのは安い輸入盤のボックスですから、日本語字幕は付いてはいません。仕方がないので英語の字幕に頼って見ていると、あちこちで「abduction」という単語にお目にかかります。もちろん、これはドイツ語の「Entführung」に相当する言葉なのですが、これは日本語に訳せば、「拉致」とか「誘拐」という意味になりますよね。普通このオペラのタイトルは「後宮からの逃走」という邦題が一般的ですが、昔はよく使われていた「後宮からの誘拐」というのも、あながち間違いではなかったのですね(確か、国内盤DVDのタイトルはこちらを採用)。
ところが、今回のシュテファン・ヘアハイムの演出には、「後宮」も「誘拐」も、そして「逃走」も出てこないというとんでもないことが起こっていました。そもそも、序曲の中間部でゆっくりした音楽が流れ始めたとき、ステージ上には全裸の男女が現れたのですから喜ん・・・いや、驚いてしまいました。その男女は、堂々と登場した割りには意気地がありません。いきなり恥ずかしそうに前を隠し始めました。もしかしたらエデンの園が入っているのかと思ってしまいましたが、それは見当外れ、男は慌てて前に置いてあったパンツを履いてとても気になる物を隠したかと思うと、燕尾服を着始めたのです。女の方もウェディングドレスで豊満な胸を覆ってしまいましたよ。そう、そこに現れたのは、結婚式を控えたカップル、しかもそれが10組以上ステージに登場したのです。

「後宮」の演出で今まで特に印象に残っているものが、ノイエンフェルスによるものでしたが、これは様々なショッキングな設定はあったものの、物語のプロットそのものにはなんの手も加えてはいませんでした。しかし、このヘアハイムの演出は、やはりそのノイエンフェルスが手がけた「こうもり」のように、物語やキャラクター設定そのものまでも大きく変えてしまったものだったのです。つまり、アリアや重唱はそのまま歌われますが、セリフの部分は、ヘアハイムによって新たに作られたものが語られています。
ここでは、ベルモンテとコンスタンツェ、ペドリロとブロンデというオリジナルの恋人同士は、どちらも新郎新婦という設定なのですが、その新婦同士がレズビアンのように振る舞ったり、ペドリロ夫妻にはすでに子供(男の子と女の子が、やはり婚礼の衣装で登場)がいたりと、オリジナルとは完全に別の物語、というか、ある種の教訓劇のような体裁になっています。ですから、その中で歌われるアリアたちは、歌詞は変わっていなくても全く別の意味にとらえることが出来てしまいます。
そんな恐ろしくぶっ飛んだ演出に抵抗がないわけがなく、ここで本来3幕だったものを第2幕の途中でペドリロがそれこそ先ほどの「こうもり」のように「Pause!」と叫んで強引に休憩を作ったときには、盛大なブーイングが巻き起こっていましたね。私は、別に抵抗はありませんが。
ボルトン指揮のモーツァルテウム管は、金管楽器にナチュラル管、つまりオリジナル楽器を使い、さらに通奏低音としてフォルテピアノを参加させています。もちろん、オリエンタルな打楽器もふんだんに使って、異国情緒を強調することも忘れてはいません。演奏も、疾走感にあふれたピリオド・アプローチ、先ほどのような斬新な設定の上に、最新の舞台機構とプロジェクターによる合成映像の合体というステージ上の革新的な景色との違和感は、全くありません。
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by jurassic_oyaji | 2006-12-12 23:37 | オペラ | Comments(0)