おやぢの部屋2
jurassic.exblog.jp
ブログトップ
MOZART/Quartets for Flute and Strings
c0039487_2116288.jpg

Severino Gazzelloni(Fl)
Salvatore Accardo(Vn)
Dino Asciolla(Va)
Francesco Strano(Vc)
BMG
ジャパン/BVCC-38401


モーツァルトのフルート四重奏曲は、大好きな曲です。フルート+弦楽三重奏という編成で作られていますから、弦楽四重奏の第1ヴァイオリンのパートをフルートに置き換えたという形になるのでしょう。ここでのフルートの役割は、ただ一人の管楽器として、ある時はアンサンブルに溶け合い、ある時はソリスティックに活躍するというもの、そこでは、まさにアンサンブルの妙とフルート奏者の名人芸の双方をたっぷり味わうことができます。痛い思いを味わうことはありませんから、ご安心を(それは「サディスティック」)。
モーツァルトがこの編成で作ったものは全部で4曲、これらがまとめて1枚のアルバムに納められているのが普通ですが、それぞれに特徴的なフォルムを持っているので、続けて聴いても飽きることはありません。最も有名なニ長調は、急-緩-急というオーソドックスな形、溌剌とした両端楽章と、ゆったりとした真ん中の楽章との対比が素敵、モーツァルトのエキスが詰まっているような曲です。2楽章しかないト長調は、言ってみればあまり肩肘を張らないで気楽に作ったという趣の曲で、力の抜けた爽やかなメロディが魅力的。ハ長調の曲もやはり2楽章ですが、こちらはもっと大規模な構成になっています。特に、第2楽章は例の「グラン・パルティータ」にも使われることになる大きな変奏曲です。そして、イ長調の曲は最初の楽章が変奏曲という珍しい形、そのあとにメヌエットとロンドの楽章が続きます。
こんな素敵な曲の集まりなのに、なぜか、今まで「おやぢ」で取り上げることはありませんでした。つまり、最近の新譜で有名なフルーティストが演奏したものはなかった(パユ様の録音は7年前)ということなのでしょうか。今回も、新録音ではありません。これは、ガッツェローニが1970年以前に(正確なデータは分からないのだそうです)録音したもので、今回が世界初CD化になるのだそうです。この前のラインスドルフといい、このメーカーはこういうことには熱心です。聞くところによると、ここには熱意のある社員の方がいらっしゃるそうで、ご自分が持っていたLPをぜひCD化したいために、権利関係で奔走したのだそうです。利益優先で何かと安直に流れがちなこの業界ですが、まだまだ捨てたものではありません。
このアルバムも、純粋に演奏水準だけを見れば特に傑出したものではないのかもしれません。しかし、リアルタイムで「すり減るほど」聴き込んだ人にとっては、優秀なリマスターによって蘇った音は、何にも替えがたいものに違いありません。その様なある意味「文化」を大切にする人たちの存在は貴重です。
RCAレーベルに録音するためにここに集まったのは、いずれもソリストや有名なアンサンブルのメンバーとして活躍している人たちばかり、特にヴァイオリンにアッカルドが参加していることで、通常のフルートだけが目立ってしまう演奏とはひと味違った、スリリングなものを聴くことが出来ます。特に、各楽器がソロを取る変奏曲のあるハ長調とイ長調で、それが強く感じられます。自分の出番ではここぞとばかりに張り切って弾きまくるアッカルド、心なしか、他の部分でもフルートよりヴァイオリンの方が強く聞こえるような録音バランスになっているようにも感じられます。
ガッツェローニのフルートは、フレーズの最後までたっぷり歌い込むという、今聴くと少し古くさいスタイルですし、あまりにおおらかすぎて、楽譜のミスなども目立ちますが、この強力なメンバーの中にあるとそんなことはあまり気にはなりません。何よりも歌心を優先したその演奏を楽しむべきなのでしょう。華麗なテクニックに酔うというのではなく、美しい音色を自在に使い分けて、とことん和ませてくれるものとして、味わいたいものです。事実、速いパッセージはかなり危なげ、ハ長調の第5変奏では、頭の音を出し損なっている部分なども見られます。
ガッツェローニといえば、当時の「現代音楽」に果敢に立ち向かっていた姿ばかりが思い浮かびますが、それとは全く異なるちょっとゆるめのモーツァルト、スタイリスティックなものばかりがもてはやされる今だからこそ、逆に輝いて見えるのかもしれません。
[PR]
by jurassic_oyaji | 2006-12-17 21:16 | フルート | Comments(0)