おやぢの部屋2
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KILAR/Bram Stoker's Dracula
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Antoni Wit/
Cracow Philharmonic Chorus
Polish National Radio Orchestra, Katowice
NAXOS/8.557703



NAXOSに多くの録音を行っている、お気に入り、アントニ・ヴィットの新譜を探していたら、こんな映画音楽のアルバムが見つかりました。スペクタクルな音楽には定評のあるヴィット、何をおいても聴いてみたいと思わせられるアイテムではありませんか。
これは、最近ではロマン・ポランスキーの「戦場のピアニスト Pianist」という、仕事が少ないために、トイレ掃除のアルバイトをしているピアニストの生活を描いた映画(それは、「洗浄のピアニスト」)ではなく、カンヌ映画祭のパルム・ドールや、アカデミー賞を総なめにしたユダヤ人ピアニストの物語で、その音楽を担当したポーランドの作曲家、ヴォイチェフ・キラールのスコアを集めたものです。NAXOSでは「新譜」ですが、実はこれは以前他のレーベルから出ていたもの、録音も1997年ですから、あいにくこの映画のサントラに使われた音楽は入ってはいません。というか、ここでは演奏に使われたショパンの曲ばかりに注目していましたから、オリジナルスコアがどんなものだったのかは、完璧に記憶にありませんが。
キャリアの最初には、ポーランドで、有名なアンジェイ・ワイダなどの自国の映画監督の作品のために100曲以上の音楽を作っていたキラールは、1992年のフランシス・フォード・コッポラの「ドラキュラ
Bram Stoker's Dracula」で、ハリウッド・デビューを果たします。ゲーリー・オールドマンやウィノナ・ライダーが出演したこの作品は確かに見たはずなのですが、やはり音楽の印象は全く残っていません。もう一つ、1994年の「死と処女(おとめ) Death and the Maiden」という、やはりポランスキーの作品も、シューベルトの「死と乙女」が効果的に使われていたことは覚えていますし、シガニー・ウィーヴァーが椅子に座らされたままパンティを脱ぐなどという細かいシーンまでも記憶にはあるのですが、キラールの音楽はどこにも残ってはいません。これは、ジョン・ウィリアムズあたりのものが、執拗に耳について離れないのとは、まさに対照的なことです。
しかし、ここで音楽だけを抜き出して聴いてみると、それぞれにとても魅力的なことに気付かされます。「ドラキュラ」の最初の曲「The Brides」は、重たいリズムに乗ってヴァイオリンが切々と奏でるメロディがとてつもなくキャッチー、しかし、それはどこか人を突き放すような厳しさも伴っているものです。それは、彼の作品の全てに共通する要素なのでしょうが、聴いた瞬間にある特定のイメージを的確に伝えられるというものであるにもかかわらず、決して心に深く残るような「甘さ」は持ち合わせてはいないという厳しさなのです。これは、映画音楽の場合にはとても重要なファクターになってくるのではないでしょうか。この映画を見ていた時には、その時に流れていた音楽によって、まさに深層での心理操作が行われていた結果、ドラマはより一層のリアリティを持って感じられたことでしょう。そこには「寅さん」における山本直純のように、音楽だけが独り歩きをしてドラマを「邪魔」していたことはなかったはずです。もちろん、見終わったあとにそのテーマを口ずさむような状況は、とてもあり得なかったことでしょう。
「処女」の場合には、それだけ聴くととてつもなく美しいテーマが最初に現れます。そのテーマは他の曲にも使われているのですが、それは徐々に別の要素が入り込んできて、ものの見事に醜いものへ変貌していきます。つまり、最初の「美しさ」は、「醜さ」を強調するための伏線でしかなかったという驚くべきことが、ここでは行われていたのです。
日本では公開されなかった1993年の「König der letzten Tage」という映画は、中世の王様の話。それに合わせて、いかにも古風なたたずまいの曲が最初に披露されます。そして、それに続くのが、合唱を伴ったミサ曲ですが、そのテイストは「ドラキュラ」と酷似しているのというキワものです。それは、音だけを聴いて判断したこと、実際に映画の中で味わえば、きっと全く別の世界が広がることでしょう。
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by jurassic_oyaji | 2007-01-14 21:46 | オーケストラ | Comments(0)