おやぢの部屋2
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CIARDI/Gran Concerto and Music for Flute
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Roberto Fabbriciani(Fl)
Massimiliano Damerini(Pf)
Stefan Fraas/
Orchestra Sinfonica del Friuli Venezia Giulia
NAXOS/8.557857



ほとんど「ロシアの謝肉祭」という技巧的なフルート独奏曲の作曲家としてのみ知られているチェーザレ・チアルディは、1818年にイタリア、トスカーナ地方の都市プラトに生まれたフルーティスト兼作曲家です。後半生をサンクト・ペテルブルクでの教師として過ごした時の産物が、「ロシアの~」になるのでしょう。サンクト・ペテルブルク音楽院ではあのチャイコフスキーに生徒としてフルートを教えていたこともあるのだそうです。
その目の覚めるようなフルートの演奏技術は、あのヴァイオリンのヴィルトゥオーソ、ニコロ・パガニーニにも匹敵するということで「フルートのパガニーニ」という名声もあったのだとか、実際彼はパガニーニその人の前で演奏、称賛を受けたこともあるといいます。作曲家としては、本格的なオペラなども作ってはいますが、もちろんコンポーザー・フルーティストとして、もっぱら自分で演奏するための技巧の丈を凝らしたフルートやピッコロのためのものが殆どだったはずです。そういう意味では、彼とほぼ同じ頃に活躍したフランツとカールのドップラー兄弟とよく似たところがある音楽家です。実際、フランツもオペラを作っていますし小学校の校歌だって作っています・・・(そ、それは「ドップラー校歌」)。
ドップラーが現在では殆どの作品が多くのフルーティストによって演奏されるようになっているのとは対照的に、チアルディの場合はいまだに「ロシア~」以外は殆ど録音されてはいないというのが現状のようです。彼のこのジャンルでの最も大規模な作品である「大協奏曲」が初めて録音されたのは、1991年のこと、このマウリツィオ・ビニャルデッリの演奏によるCDでした。
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DYNAMIC/CDS 78

しかし、「協奏曲」とは言ってもこの時の録音はピアノ伴奏のバージョンでした。元々は作曲者によるきちんとしたオーケストラ版も出来ていたのですが、今ではその楽譜は散逸してしまっているそうなのです。今回録音されたものは、ソリストのファブリッチアーニが自らオーケストレーションを施したもの、晴れて本来の協奏曲の形が蘇ることになりました。同様に、やはりDYNAMIC盤に収録されていた「アルノのこだま」という変奏曲も、ファブリッチアーニによるオケ伴バージョンを聴くことが出来ます。ここではトライアングルやシンバルが使われていますが、その響きはちょっと異質、もしかしたらこれは彼の裁量での楽器編成だったのかもしれません(もっとも、これらはパガニーニのオーケストレーションには良く登場しますから、そのあたりを意識したものなのでしょうか)。
その他の曲も、特にコメントはありませんが今まで録音されたことがなかったであろうものが数多く見受けられます。「フルートとピアノのための悲歌 心のため息」などという作品は、ただ技巧的なものを追求したのではない、もっと高い次元での音楽的な訴えかけのあるものです。
ところが、これほど魅力的な企画であるにもかかわらず、ソリストのファブリッチアーニが全く精彩に欠けているためにこのアルバムは殆どクズ同然の仕上がりになってしまいました。もっぱら現代音楽のシーンで活躍しているという印象の強いファブリッチアーニですが、その様な場所で見せてくれる目の覚めるような技巧は影を潜め、とてもこのような難曲には太刀打ちできなくてマゴマゴしている様子が、ありありと見受けられるのです。
さらに失望させられるのは、彼の音です。このようなイタリアの作曲家の曲には欠かすことの出来ない輝かしさがまるで備わっていないのです。しかも、これはもしかしたら録音上のミスなのかもしれないのですが、高音に妙な息音が混ざっているため、そのあたりの音がとても苦労して出しているように聞こえてしまうのです。こんな技巧的な曲は、なんの苦労もないような印象を与えるように軽やかに吹いて欲しいもの、それをこんなにヘロヘロになって吹かれたのでは聴いている方が辛くなってしまいます。正直、最後の3曲ほどはとても聴き続ける忍耐力などはありませんでした。
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by jurassic_oyaji | 2007-01-23 22:00 | フルート | Comments(0)