おやぢの部屋2
jurassic.exblog.jp
ブログトップ
MOZART/La Finta Giardiniera
c0039487_20201945.jpg
Alexandra Reinprecht(Violante/Sandrina)
John Graham-Hall(Don Anchise)
John Mark Ainsley(Berfiore)
Véronique Gens(Arminda)
Ruxandra Donose(Ramiro)
Adriana Kucerová(Serpetta)
Markus Werba(Roberto/Nardo)
Doris Dörrie(Dir)
Ivor Bolton/Mozarteum Orchester Salzburg
DG/00440 073 4322(DVD)



「偽の花作り女」とか「偽りの女庭師」などという邦題が付けられている、モーツァルト18歳の時の作品です。「finta」というのは確かに「偽りの」という意味ですが、このオペラの場合は「ふりをする」ぐらいに解釈した方が、ストーリーとマッチするのではないでしょうか。「なんちゃって庭師の女」とかね(そんな好き放題の邦題は認められません)。
なぜ庭師のふりをしているのか、というのは普通の上演の場合はあとの方にならないと分からないようになっているのですが、かつてベルリン国立歌劇場で「コジ・ファン・トゥッテ」の見事にはじけたステージを作り上げた映画監督ドリス・デーリエは、序曲の間にカットバックのようにそのシーンを挿入して、息もつかせぬダイナミックなドラマの流れを作り出すことに成功しました。舞台は18世紀、ロココ風のセットの中で伯爵令嬢ヴィオランテは嫉妬に狂った恋人ベルフィオーレ伯爵の手にかかって息を引き取りますが、そこに入ってきた従者ロベルトの心肺蘇生術(これで、まず笑いをとります)によって生き返ります。
本来は、そのあとヴィオランテはサンドリーナと名前を変え(ロベルトも従弟のナルドとなって)、庭師のふりをして市長であるドン・アンキーゼの屋敷に雇われるという設定なのですが、もちろんデーリエはそんなありきたりの展開はさっぱりと捨て去ります。市長の屋敷はなんとガーデニング商品の充実した巨大なホームセンターに置き換えられ、ドン・アンキーゼはそこの店長という役どころとなっています。序曲が終わった瞬間、そこに、時空を超えてサンドリーナ達が現れてしまうのです。ドン・アンキーゼは一目でサンドリーナを気に入って、ナルドと一緒に店員として採用、その店には本来小間使いだったセルペッタが、レジ係として派手なタトゥー姿で働いています。騎士のラミロも、パンクなファッションを制服に包んだ、アルバイト店員でしょうか。
店長の姪アルミンダの婚約者として登場するのが、先ほどサンドリーナを殺したばかりのベルフィオーレ、彼はさっきのままのロココファッションですから、いやでもサンドリーナとのつながりが分かってしまうという仕掛けになっています。
物語は、ホームセンターの商品を総動員して進行していきます。庭の置物でしょうか、三美神の石像がベルフィオーレのアリアの間に彼に絡みつくというのにはギョッとさせられます。白塗りのその豊満な胸・・・と思ったら、それは「DJ-OZMA」と同じ事、ボディスーツの上にプリントされた乳房でした。そんなエロティックな仕掛けも満載、なんせサンドリーナは大詰めではバスタオル1枚ですからね。
ステージがあまりにファッショナブルなので、つい音楽を忘れてしまいそうになりますが、それぞれの持ちアリアは本当に魅力的なものが揃っています。滑稽なものから激しい心情をぶちまけるものまで、モーツァルトのアイディア豊かな音楽がたっぷり味わえます。例えば、第1幕でドン・アンキーゼが歌う3番のアリア「Dentro il mio petto io sento」では、最初はフルートとオーボエが優しく語り合っているところへヴィオラが憂鬱な雰囲気を持ち込み、最後は打楽器と金管がめちゃめちゃにしてしまうという歌詞に、その通りの音楽が付いているという楽しいものです。ちなみに、フルートが登場するアリアはこれ1曲だけ(のはず)。オーボエも2本入っていますから、持ち替えではなくここだけのためにフルート奏者が待機していたのでしょうか。
第1幕や第2幕のフィナーレも、情景が変わるのにシンクロして音楽がどんどん変化していくのがとってもスリリング、あの「フィガロ」の第2幕のフィナーレを思わせられるような高い完成度が見られます。
若手中心のキャスティング、それぞれの軽やかな声が、軽快なステージと見事にマッチしています。ジャンス(アルミンダ)あたりはあまりに立派すぎてちょっと浮いている感がなくはないと思われるほど、それはフレッシュな布陣です。ボルトンの指揮の中に垣間見られるある種の「タメ」に違和感を抱く人は、きっとアーノンクールが嫌いなのに違いありません。
[PR]
by jurassic_oyaji | 2007-02-11 20:21 | オペラ | Comments(0)