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この一冊で読んで聴いて10倍楽しめる!クラシックBOOK
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飯尾洋一著
三笠書房刊(王様文庫)
ISBN978-4-8379-6375-2


著者の肩書きは「音楽評論家」、しかし、最近こと「クラシック音楽」のフィールドでは、このような呼び方をされている人はめっきり少なくなってしまったような気はしませんか?
何と言ってもその様に呼ばれるべき人のモデルとして、私たちは吉田秀和翁を持ってしまっているわけですから、とてつもなく高尚なイメージがこの言葉にはつきまとっているはずです。ですから、たとえ「評論」を書く立場にある職業でも、自らを「評論家」とは呼ばず「ライター」などという当たり障りのないところでカテゴライズするというのが、最近の流れなのではないかと思えるのですが。
飯尾洋一さんといえば、ネット社会ではCLASSICAというサイトの主宰者として夙に知られている方でした(私のサイト、ブログでもいつもお世話になっています)。そこで垣間見られる彼の素顔(あくまでネットを通してのものですが)からは、そんなタカビーなイメージはさらさら感じられません。考えてみれば、この「評論家」という言い方自体は、同時に、実に胡散臭いイメージを備えているものでもありました。巷には「○○評論家」の何と多いことでしょう。「ゲーム評論家」、「ゴスロリ評論家」、「カレー評論家」、「温泉評論家」、「ヨーロッパ評論家」・・・・・。おそらく、そんな語感までを含みつつのちょっと斜に構えたスタンスで、「評論家」と名乗っているのでは、というのは、あくまで当て推量にすぎませんが。
この本の構成は、古今の作曲家40人についての解説と、代表的な作品の紹介という、正攻法のものです。しかしこれがあまたの「ハウツー本」と異なるのは、その視点の低さでしょう。ともすれば「評論家」が陥りがちな、自分の知っていることを初心者向けに噛み砕いて「やさしく」解説する、という姿勢が、ここには全く見当たらないのです。あくまで自分が知っていることを他の人たちと共有したいというマニアックなスタンスが、素敵です。もちろん、音楽だけではなく、映画なども交えた広範な視野も見逃せません。そんな著者が作曲家のプロフィールを語るのときの、ポイントを押さえた筆致には思わず引き込まれてしまいます。そこには、音楽的な業績よりは、その作曲家の人間としての姿がより多く記されているという点が、その最大の理由ではないでしょうか。女性関係についての記述が多いと感じられるのは単なる錯覚でしょうか。「リアル父」という言い方、好きです。いきなり「フィボナッチ数列」などという、絶対に音楽家の伝記には現れるはずのないタームが出てくるのには一瞬ひるんでしまいますが、著者の経歴を見てみるとそれも納得、彼は理科系の人だったのですね。もしかしたら音楽を語ることにかけては、理科系の方が得意なのかもしれない、そんな自信も与えてもらえます(余計なことですが、私も理科系)。
もうひとつ、「おもしろ雑学集」というコーナーが秀逸です。中でも「感動指数」(これも理科系っぽい表現)に関する言及は、音楽を聴く意味の根源をここまで平易な言葉で語ることが出来るのか、という感動すらわきおこる一文です。「音楽をポジティブに聴く」という姿勢をこれほどすんなりと受け入れられる書物には、正直初めて出会ったような気がします。
吉田翁の事実上のリタイアという事態を受け止める中で、私たちは吉田翁の呪縛から解かれた等身大の「音楽評論家」がようやく登場してきたことを、喜びと共に実感しているところです。
蛇足ですが、プッチーニの項でのワールドカップに於ける「誰も寝てはならぬ」の起源については、こちらの方がより正確な事実関係ではないでしょうか。
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by jurassic_oyaji | 2007-02-13 20:03 | 書籍 | Comments(0)