おやぢの部屋2
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Wolfgang Windgassen singt Wagner
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Wolfgang Windgassen(Ten)
Richard Kraus, Ferdinand Leitner,Leopold Ludwig/
Bamberger Symphoniker, Münchener Philharmoniker,
Radio-Symphonie-Orchester Berlin
DG/000289 477 6543



昔からレコードを聴き続けている人にとっては、これはとても懐かしいジャケットデザインなのではないでしょうか。ドイツ・グラモフォンの、多分モノラルLPの時代のものが、こんな感じ、レーベルカラーの黄色がベタで広がっているというデザインです。ステレオ時代になると、今でも使われている「枠」で、この黄色い部分を囲むようになるのでしょうね。
1914年に生まれて1974年に亡くなった不世出のヴァーグナー歌手、ヴォルフガング・ヴィントガッセンのこのソロアルバムも、1953年から1958年にかけて録音された、もちろんモノラルLPでした。今回はその初CD化、LPには収録されていなかった「マイスタージンガー」からの3曲もボーナス・トラックとして加わっています。
ただ、データはそれぞれのトラックの録音年しか記載されておらず、プロデューサーやエンジニアの名前は分かりません。さらに、ちょっと問題なのはここで演奏している指揮者とオーケストラがどの曲を演奏しているのかという情報が全く欠けていることです。指揮者は3人、オーケストラも3つクレジットされていますが、誰がどのオケを振っているのかすら分かりません。まあ、半世紀以上前のものですからそれは許してあげましょうか。私たちはヴィントガッセンの声さえ聴ければいいのですから。
実際に聴き始めると、録音のせいもあるのでしょうが、確かに、オーケストラがどこであるか分かったところで何の意味もなさそうな、いかにも田舎臭いサウンドにはちょっとひるんでしまいます。木管あたりもかなり怪しげ。しかし、ひとたびヴィントガッセンの声が響き渡ると、そんなことは全く気にならなくなってしまいます。何という存在感のある声なのでしょう。力強く、中身のいっぱいつまったその声は、まさに「ヘルデン・テノール」の理想的なもののように聞こえます。しかし、しばらく聴いているうちに、その存在感の拠り所は単に声の質だけではないことに気付かされます。それは、例えば「ジークフリート」の「鍛冶屋の歌」で見られるリズム感の良さなのかもしれません。どんなオペラ歌手にもありがちな、ちょっとした自分の都合による(ブレスなど)リズムの揺れが、この人の場合は全く見当たらないのです。
さらに、これだけの「強い」声を聴かされると、ほんのちょっと抜いた軽い声がとてつもない力となって伝わってきます。それが体験できるのが「ローエングリン」の「In fernen Land」でしょう。第1幕の前奏曲と同じ、透明な弦の響きによるイントロ(ここでのオケには、そんな透明感は望むべくもありませんが)に続いて歌われる歌には、この世のものとも思えない澄んだ輝きが宿っていました。その聖杯の物語が進むにつれて徐々に盛り上がっていくさまは、興奮なくしては味わえません。そして、最後はとっておきのあの力強い声です。
ちょっと不思議だったのは、「パルジファル」で歌が始まった瞬間に、他の曲では見られなかったような明るさが感じられたことです。もしかしたらキャラクターの若々しさを表現するために意図して音色を変えていたのかもしれません。これはすごいことです。
これほどのコントロールがきいて、自在に表現を操れる「ヘルデン」など、現代のテノールの中にはちょっと見当たりません。あるいはヨナス・カウフマンあたりが、将来はそうなって欲しいという思いを託せる人でしょうか。
ただ、ボーナス・トラックの「マイスタージンガー」は、なにか気の抜けたような一本調子で、表現はちょっと雑。このトラックの素性は知るよしもありませんが、こんなところがオリジナルLPで「ボツ」になった理由なのでしょうか。とは言え、久々に味わえたヴィントガッセンの魅力、暖冬の今年はなかなか機会がありませんでしたから、なによりの贈り物となりました(それは「雪合戦」)。
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by jurassic_oyaji | 2007-02-22 21:11 | オペラ | Comments(0)