おやぢの部屋2
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BACH/Mass in B Minor
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Dorothee Mields, Jonette Zomer(Sop)
Matthew White(Alt)
Charles Daniels(Ten), Peter Harvey(Bas)
Jos van Veldhoven/
The Netherlands Bach Society
CHANNEL/CCS SA 25007(hybrid SACD)



このジャケ写、真ん中の赤い部分は「タスキ」、紙のテープが巻いてあります。本体はしっかりとしたボックスセットになっていて、厚さは3センチほど、まるでバレンタインデイにどっさりもらった可愛らしいチョコレートの箱のように見える立派な物です。その中にはCD2枚組のデジパックに加えてなんと192ページに及ぶという堂々たるハードカバーのブックレットが収まっていました。同じ内容が英語、オランダ語、ドイツ語、フランス語と4ヶ国語で書いてあるのでテキストが多い事もありますが、それだけではなくここにはユトレヒトにある「カタリーネコンフェント」という往年の歌手のような名前の(それは「カテリーナ・ヴァレンテ」・・・似てねえ!)博物館のコレクションの写真がたくさん載っていて、ちょっとした美術書のような体裁になっています。つまり、このCDは、その博物館とのコラボレーションの結果生まれたもの、多少値段が高くなっていますが、それに見合うだけの付加価値はある商品なのです。フェルトホーフェンとオランダ・バッハ協会のこの超豪華装丁のシリーズ、他にも「クリスマス・オラトリオ」と「ヨハネ受難曲」がリリースされています。
最近もリリンクの新しい演奏を聴いたばかりの「ロ短調」ですが、この曲の場合単にモダン楽器とオリジナル楽器という違いだけではなく、様々なアプローチが試みられていますから、それぞれに個性的な味わいを楽しむ事が出来ます。その中でも、ポイントは合唱の人数の設定ではないでしょうか。ソロも含めて全てのパートを一人だけというものから、大人数の合唱、ソロも同じパートでも曲によって別の人が歌うというものまで、多種多様なセッティングのものが発表されています。そんな中で、フェルトホーフェンがとったのは、基本的に1パート一人ですが、リピエーノとしてもう2人ずつ用意して、適宜加わってもらう、というやり方でした。
これによって、曲の持つキャラクターがとても立体的に表現されているのを感じるはずです。ここで参加しているソリスト達は、それぞれアンサンブルも非常にうまい人たちですので、それだけの合唱でも見事なフォルムを形づくっています。特に「Cum Sancto Spiritu」のような複雑なメリスマなどは胸のすくような鮮やかさです。かと思うと、「Crucifixus」では、一人一人の細かい表情がストレートに現れてきて、直接的に胸に刺さるような精密な表現が可能になっています。そして、そこにある部分だけさらに人が加わる事によって、音色も肌触りも全く異なる新たな風景が広がります。ちょうどオルガンでストップを変えるように、瞬時に編成が変わる事によってもたらされる効果は、絶大なものがありました。
ソリストの中で最も感銘を受けたのはアルトパートを歌っているカウンターテナーのホワイトです。バロック・オペラの世界でも、かつてカストラートによって歌われていたパートを歌って活躍している人ですが、ファルセット特有の弱々しさの全くない、強靱な力はとてつもない魅力を放っています。ほんの少しビブラートがかかる時の何とも言えないニュアンスには、思わず惹き付けられてしまいます。彼のアリア「Agnus Dei」は、「古楽系」の演奏の一つの到達点なのではないでしょうか。
ソリストたちの完璧さに比べると、オーケストラも、そしてリピエーノの合唱も、さらにフェルトホーフェンの指揮ぶりも、ちょっとした「拙さ」が顔をのぞかせるのが、妙に暖かい印象を与えてくれています。へたに隙のない演奏よりも、この方がとても音楽として満たされたものを感じるのが不思議なところ、もし、最初からそれねらっていたのなら、それはそれでまた驚異的な事です。
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by jurassic_oyaji | 2007-03-23 19:48 | 合唱 | Comments(0)