おやぢの部屋2
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FABBRICIANI/Graciers in Extinction
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Roberto Fabbriciani(hyperbass flute)
COL LEGNO/WWE 1CD 20254



楽器には、同じ構造でありながら大きさが異なることによって音域が変わってくる「仲間」があります。ヴァイオリンを少し大きくするとヴィオラ、もっと大きくするとチェロ、といった具合、大きくなれば当然演奏の方法も変わってきます。
フルートの場合も、そんな「仲間」がたくさんいます。一番小さいものはご存じ「ピッコロ」、これは普通のフルート(C管)の1オクターブ高い音を出す楽器です。低い方になっていくと、G管の「アルト・フルート」、C管の1オクターブ下の「バス・フルート」などが、かろうじてオーケストラでも使われることがあるという「仲間」です。
しかし、最近ではさらに「仲間」の絆を深めて、フルートだけで合奏する時に必要な、もっと低い音の出る楽器も作られるようになってきました。日本の「コタト・フクシマ」というメーカーがこの方面では熱心で、こんなラインナップを作り上げてしまいました。
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左端が普通のC管ですが、右に行くにしたがって1オクターブずつ低い音が出る楽器が並んでいます。「バス・フルート」では、管を曲げないことには指が届きません。楽器を支えるのも大変ですから、ちゃんとつっかえ棒が付いています。その右の「コントラバス・フルート」になると、もはや横には構えられませんからこんな形になりました。そして右端が「ダブルコントラバス・フルート」、3オクターブ下の音が出る楽器です。軽く背丈を超える巨大な「フルート」です。
オクターブ下の音を出すためには、管の長さを2倍にしなければなりません。「コントラバス」でさえこんなに大きいというのに、それよりもさらにオクターブ下まで出る楽器「ハイパーバス・フルート」を作ってしまった人がいるのですから、驚きます。それは、現代音楽ではお馴染みのイタリアのフルーティスト、ロベルト・ファブリッチアーニです。
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全体の画像がないので正確にどんな形をしているのかは分かりませんが、こうなるともはや「楽器」というよりは「建造物」と言っても差し支えないほどの規模がありそうです。もしかしたら、もはやこの場所から運び出すことすら出来ないのかもしれません。材質は、写真で見る限り水道管に使われる塩ビのパイプのようですね。ファブリッチアーニは「軍手」をはめていますから、「演奏家」というよりは殆ど「大工さん」といったノリなのではないでしょうか。
気になるのは、音程を変えるためのキー・メカニズムが見当たらないということです。もしかしたら、2~3人がかりであちこちのパイプの開口部を手で押さえてまわるのかもしれませんね。
しかし、ファブリッチアーニ自身による「絶滅に瀕した氷河」という、実際に今でも残っている各地の氷河から触発されて作ったという6つの部分から成る長大な作品を聴くと、そんな「音程」などは些細な問題であることが分かってきます。これは、まさにこの「楽器」のとてつもない低音を体全体で味わうための曲、というよりはある種の音のスケッチのようなものだったのです。テープに録音した音を流しながら演奏するというものですが、そのテープには生音だけが収録されていて、電気(子)的な処理は一切施されていないといいます。そう言われてもとても信じられないような、その多彩な音には、圧倒されっぱなしでした。C管の最低音の4オクターブ下ということは、ピアノの鍵盤の左端よりもさらに低い音が、リードも何もないところに息を吹き込むだけで出てくるのですからね。
そう、まるで嵐のように不気味に鳴り響く風の音や、氷河が砕ける様な「ブワン」という恐ろしげな音、ファブリッチアーニはもっぱらそういうものを聴かせたいためにこれを作ったのではないかと思われるほど、「音程」とか「メロディ」とは全く無縁の楽器が、そこでは鳴り響いていたのです。
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by jurassic_oyaji | 2007-04-07 23:22 | フルート | Comments(0)