おやぢの部屋2
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MOZART/Apollo et Hyacinthus
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Singers
John Dew(Dir)
Josef Wallnig/
Sinfonieorchester der Universität Mozarteum
DG/00440 073 4253(DVD)



2006年のザルツブルク音楽祭では、モーツァルトが11歳の時に作った最初のオペラ「アポロとヒアキントゥス」と、その2ヶ月前に作られた宗教劇「第一戒律の責務」がカップリングされて上演されました。会場は以前ご紹介した「牧場の王」で使われたザルツブルク大学の講堂です。この二つの作品はいずれも「学校劇」として当時の学生たちによって上演されたものですから、まさに初演ゆかりの地ということになります。オーケストラがモーツァルテウムの学生オケというのも、初演の精神にちなんだものなのでしょう。それにしてもこのオーケストラ、ホルンとファゴット以外はほぼ全員女性というのは、すごいものがあります。
最初に演奏されたのは「3幕のラテン語による学校喜劇」というサブタイトルの、ラテン語の歌詞で歌われる「アポロ~」です。男役もスカート姿というギンギンのロココ調の衣装に身を包んで、徹底的に様式化された演技が繰り広げられるのを見ていると、演出のジョン・デューは、まさに「学校劇」というよりは殆ど「学芸会」のノリの陳腐さを装うことを目指したのではないかと思えてきます。エバルス王(Maximilian Kiener)の娘である王女メリア(Christiane Karg)が、客人のアポロ(Anja Schlosser)と愛し合ってしまったことを妬んだモトカレのゼフィルス(Astrid Monika Hofer)は、腹いせに王子のヒアキントゥス(Jekaterina Tretjakova)を殺し、その罪をアポロになすりつけるのですが、アポロによって王子はヒアシンスの花に生まれ変わる、という崇高な話をラテン語で歌わせるためには、このぐらいの設定が必要だったのでしょう。
音楽の方も多少型通りのものが続く中で、最後近くで歌われる8番の王と王女の嘆きのデュエット「Natus cadit, atque Deus」は、ファースト・ヴァイオリンのピチカートに乗って歌われる「モーツァルトらしさ」が現れた美しいものです。ここで歌っているメリア役のカルクは、第2幕で歌われるとてつもなく技巧的な4番のアリア「Laetari, iocari」ともども、キャストの中で抜きんでた存在感を示していました。
後半の「責務」では、そのカルクだけが続投、他のキャストは全員入れ替えです。こちらは「宗教的ジンクシュピール」というだけあって、言葉はドイツ語、音楽も見違えるように溌剌としたものとなっています。それに合わせるかのように、デューの演出も一転して田舎芝居のようなテイストに変わります。
「第一戒律~」などという重苦しいタイトル(出典はマルコ福音書)ですが、内容は擬人化された「正義」(渡辺美智子)や「慈愛」(Cordula Schuster)の命を受けた「キリストの霊」(Bernhard Berchtold)が、「世俗」(カルク)の影響で何かと楽な方へ流れようとする「キリスト教徒」(Peter Sonn)を正しく導こうとする、というものです。ここでのカルクは前半のお姫様ファッションとはうってかわって、全身を真っ赤にペインティングした「赤鬼」スタイルで登場、こんな極端に違う役を軽く演じ分けているのには驚いてしまいます。もちろん、歌の方も申し分ありません。いや、その他の人たちも、とことんこのドタバタ劇を楽しんでいるようで、見ている方も心が和みます。
5番のキリスト教徒のアリア「Jener Donnnerworte Kraft」には、トロンボーンのオブリガートが付きます。モーツァルトの最後の作品でもソリスティックに用いられたこの楽器、こんな早い時期から使われていたのですね。素晴らしい演奏を聴かせてくれるソリストが、天使の衣装とメークで客席の中からステージまで演奏しながら歩いてくるという演出は見物です。そう言えば、指揮者のヴァルニッヒも最後には「世俗」に連れ去られてしまうのですね。
おそらく「M22」での唯一の日本人、というよりは東洋人のキャストである渡辺さんは、歌はともかくドイツ語のディクションは到底西洋人には及ばないものでした。なにしろ最初に登場した途端、その違和感だらけの発音には戸惑いを感じないではいられませんでしたから。ついでに苦言を呈せば、このシリーズ、ブックレットが間違いだらけなのは困ります。19ページの写真のキャプションはともかく、この曲のサブタイトルが「Singspiels」ではなく「Festspiels」になっているなんて、信じられないほどお粗末。
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by jurassic_oyaji | 2007-04-18 20:19 | オペラ | Comments(0)