おやぢの部屋2
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MOZART/Requiem
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福島章恭/
東京ジングフェライン
ヴェリタス室内オーケストラ
BLUE LIGHTS/AFCD 0002


2006年の10月録音という、まさに「最新」のモーツァルトのレクイエムです。この年、おそらく世界中でこの曲が繰り返し演奏されたことでしょうが、もちろんそれは日本でも例外ではありません。正確は数字など知りようもありませんが、生誕250年というこの機会にこの名曲を演奏しようとした団体はプロ・アマを含めて数限りなくあったことでしょう。そんな中の一つが、商業用のCDとなって「商品」としてリリースされました。この曲の録音についてはかなりのものを網羅したと思えるこちらのリストを見てみても、日本人の演奏によるものは1965年の若杉弘以外には見当たりませんから、これはある意味「快挙」と言ってもいいのかもしれません。
ここで指揮をされている福島章恭さんという方は、あるいは音楽評論家としてすでに名声を博しているのではないでしょうか。今までに何冊かの著書が出版されていますが、その情熱的な筆致は読むものをとらえて離さない魅力を持っています。それは、あの宇野功芳氏に私淑しているというところから生まれる、とことん自らの感覚に正直な語り口によるものでしょう。
その福島さんは、実は桐朋学園大学で声楽を専攻されたプロの音楽家でもあるのです。現在では合唱を中心に幅広く指揮活動も行っているという、まさに師匠譲りの二足のわらじで大活躍をなさっています。なんでも2005年にはプラハのスメタナホールでドヴォルジャークのミサ曲、2006年にはウィーンのムジークフェラインザールでモーツァルトのレクイエムを指揮したということです。まさにその曲がかつて演奏された「本場」で、耳の肥えた聴衆を前にしても一歩もひけをとらない演奏を披露した、ということになるのでしょうね。
ここで歌っているのは、そんな福島さんを慕い、彼のもとでの練習と本番の演奏会を通じてクラシック音楽の心髄に触れたいという人たちが集まって、2005年に結成された「東京ジングフェライン」というアマチュアの合唱団です。90人ほどの大人数、確かに一つの目的を持って集まったというエネルギーには、言いようのない力を感じるはずです。
その力を信じた福島さんは、この曲に真っ正面から立ち向かい、とてもパワフルな魅力を引き出しています。それは、小細工を弄して表面的な効果を追うのとは全く異なる、言ってみれば直球勝負の魅力でしょうか。結成から日が浅いということもあって、必ずしも細部でのまとまりには十分とは言えない面のあるこの合唱団は、その弱点を骨太な音楽でカバーして圧倒的な感動を伝えてくれています。
ただ、おそらくそれは実際に会場で生の演奏に接した時ほどには、このCDでは伝わってはいないのかもしれません。かなりデッドなホールでの録音ですから、マイクを通した時にはよっぽどエンジニアの耳が良くない限り暖かみのある音で収録するのは難しいはずです。特にオーケストラの音が、妙にざらついているのは気になります。そして、おそらく会場ではそれほど気にはならなかったことなのでしょうが、こうして客観的に聴いてしまうと、悠然と流れている合唱の前で、このプロのオーケストラが何とも余裕のない走り気味の醜態をさらしているのが分かってしまいます。
カップリングとして、2003年に録音された弦楽合奏版の「アヴェ・ヴェルム・コルプス」と、2005年に録音された「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」が収録されています。これを並べて聴くと、2003年には持て余し気味だった主観のたぎりが、2005年には見事に整った形になっているのが良く分かります。「円熟」とは、きっとこういうことを言うのでしょう。都庁だってありますし(それは「新宿」)。
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by jurassic_oyaji | 2007-04-20 23:14 | 合唱 | Comments(0)