おやぢの部屋2
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The Art of the Flute
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Wolfgang Schulz(Fl)
Matthias Schulz(Fl)
Peter Schmidle(Cl)
乾まどか(Pf)
NAXOS/8.570309



「フィルハーモニック・ソロイスツ」という、このレーベルとオーストリア放送協会の共同制作によるシリーズは、ウィーン・フィルの各パートの首席奏者にスポットを当てて室内楽のアルバムを作るという企画です。今までにクラリネット、ホルン、ヴィオラ、チェロがリリースされていましたが、第5弾としてフルートの登場です。
アーティストは、今や押しも押されぬウィーン・フィルの首席奏者として大活躍のヴォルフガング・シュルツ、そして2005年からウィーン国立歌劇場のオーケストラのメンバーとなった、彼の息子マティアスです。1曲だけこのシリーズにも登場したウィーン・フィルの首席クラリネット奏者のペーター・シュミードルが参加、ピアノ伴奏はシリーズに共通している日本人、乾まどかです。
プログラムは、最初に2本のフルートの持ち味を堪能できるものが並びます。1曲目は、なんと、あの「のだめ」ですっかり有名になったモーツァルトの「2台のピアノのためのソナタ」を、フルート2本とピアノのために編曲したものです。のだめと千秋の息詰まるようなバトルを、シュルツ親子が再現しようという趣向です(いや、彼らにはそんな意識はないはず・・・)。エリーザベト・ヴァインツィールとエドムント・ヴェヒターという2人のフルーティストによって編曲されたこのバージョンは、原曲の煌びやかなテイストをそのままこの編成に置き換えたものですから、フルートにとってはまさに超絶技巧を要求されるものですが、シュルツ親子は見事にその華やかさを再現してくれました。そして、第2楽章ではたっぷり歌い込んだ味わい深いものも聴かせてくれます。リードをとっているのは左から聞こえてくるお父さん、右側の息子の方はテクニックにはなんの遜色もありませんが、ちょっと音が素直すぎるでしょうか。
2曲目は、同じ編成のクーラウの「グランド・トリオ」です。フルート愛好家にとってはかけがえのないこの作曲家も、「クラシック」界ではいまだにマイナーな存在に甘んじていますが、この曲あたりを聴けばおそらく今までこの作曲家を聴いてこなかったことを後悔するかもしれません。それほどに心の琴線に触れる旋律と溌剌とした生命力にあふれた魅力的な曲、この親子のようなしっかりしたテクニックでかっちり演奏されると、それはかけがえのないものにすら聞こえてくるはずです。
3曲目はフルートとアルトフルートの二重奏で、ジャン・フランセの「オウムの対話」という、小粋な作品です。とてつもない技巧をさりげなく聴かせることによってエスプリを浮かび上がらせるという、フランセならではの難しい面を持つ曲ですが、もちろんこの親子にとっては難なく料理できるものです。ここではマティアスくんがフルート、お父さんはアルトフルートでサポートに徹するというシフトですが、そうなってくるといかに父親の存在感が大きいかが如実に分かってしまうという、ちょっと辛い面も露呈されてしまいます。
4曲目は、ゲストのシュミードルとお父さんでサン・サーンスの「タランテラ」、これはまさに円熟の極みです。
そして、最後にプーランクのソナタがお父さんによって演奏されます。これはなんという隙のない演奏なのでしょう。とても60歳とは思えない技巧の冴え、表現も年寄り臭いところの全くないストレートなものです。「若さ」さえ感じられるこの怪演、このお父さんを超えることは、マティアスくんにとっては殆ど不可能なことではないでしょうか(頭だけは越えてますが。彼に必要なのは音楽性と増毛手術)。
室内楽を中心にウィーンで活躍されている乾さんのピアノも、フルートと対等に渡り合っているにもかかわらず、決して出しゃばることのない素晴らしいものです。それは、もしかしたらベーゼンドルファーの音色がもたらしたものなのかもしれません。
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by jurassic_oyaji | 2007-04-23 20:39 | フルート | Comments(0)