おやぢの部屋2
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MOZART/La Finta Semplice
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Malin Hartelius, Silvia Moi
Marisa Martins, Marina Comparato,
Josef Wagner, Jeremy Ovenden
Matthias Klink, Miljenko Turk
Marianne Hamre(Narrator)
Joachim Schlömer(Dir)
Michael Hofstetter/
Camerata Salzburg
DG/00440 073 4251(DVD)



モーツァルトには、「Irrfahrten」、つまり「さまよい」とか「遍歴」といった意味を持つタイトルの作品などはありません。これは、以前シュトゥットガルト州立劇場の「ラインの黄金」のプロダクションで演出を担当していたヨアヒム・シュレーマーという振り付け師が、モーツァルトの作品を再構築して3夜にわたって上演される「三部作」の形にしたものなのです。本格的なオペラとしては最初のものとなる「ラ・フィンタ・センプリーチェ」から始まり、間に様々な曲を集めたパスティーシュを置いて、未完の「騙された花婿」と「カイロの鵞鳥」の断片を紹介したあと最後の作品である「レクイエム」で締めくくるという、言ってみればモーツァルトの劇場音楽に於ける「遍歴」をテーマにしたプロダクションに仕上がっています。
そんな、「旅」には欠かせない旅行鞄が、ここでは一つのモチーフとして、全体を通して登場します。中に入っているのはお札とピストル、これらがなんのメタファーなのか、それは見る人の解釈次第でしょう。
「第1部」では「ラ・フィンタ・センプリーチェ」がそのまま上演されます。とは言っても、そこにはシュレーマーのコンセプトがしっかり入り込み、物語の進行を務める原作にはないキャラ(ハムレ)が登場することになります。彼女は登場人物を紹介したりレシタティーヴォの一部を語ったり、時には他のキャストと絡んだりまします。ちなみにタイトルには「みてくれの馬鹿娘」というかなりぶっ飛んだ邦題が一般に用いられていますが、主人公のロジーナ(ハルテリウス)は別に「馬鹿」なのではなく、「うぶな娘のふり」をしているというだけですから、いずれはこんな邦題は使われなくなることでしょう。と言うより、今まではそういうものがあるということだけは知られていたのに、実際に上演される機会が殆どなかったために直しようがなかっただけなのでしょうから、こんなDVDできちんと中身が分かるようになれば、自然と是正されることになるはずです。
舞台装置は白一色、登場人物も真っ白なシンプルそのものの衣装で登場したものが、場面が進むにつれて次第に赤い靴を履いたり、赤いベルトを付けたり、赤い時計をしたり、赤いシャツを着たり、そして最後には全身を赤い絵の具で塗られたりという「変化」が見られるようになってきます。ある種の成長過程の、これまたメタファーになっているのでしょうか。
女嫌いの兄カサンドロ(ヴァーグナー)に許されないために、恋人フラカッソ(オヴェンデン)と結婚出来ない妹ジアチンタ(コンパラート)のために、フラカッソの妹ロジーナが「うぶな娘」のふりをしてカサンドロを誘惑する、というお話、そのロジーナの本心ともいうべきキャラが、ダンサーによって演じられているのも、もちろんシュレーマーのプランです。全く同じ仕草をしたり、アリアの間にダンスを踊ったり、そしてこんな風にまるで「貞子」のような髪ではだかを披露したりと、大活躍。でもこれは、いくらなんでも「リング」(もちろん、ヴァーグナー)を意識したものではないでしょうね。
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会場のレジデンツホーフは、ちょっとしたスタジオといった狭いところ、オーケストラも一応ピットに入っていますが、演奏している姿は観客からはよく見えます。通奏低音にフォルテピアノとリュートという組み合わせがちょっとユニークなところでしょうか。これはセッコの時だけではなく、普通のナンバーでも演奏に加わって、変わった味を出しています。
もう一組の恋人の片割れを演じているトゥルクというバリトンの、ひときわ伸び伸びとした素敵な声が印象的です。彼はマスクも涼しげなイケメン、きっとこれからファンが増えることでしょう。
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by jurassic_oyaji | 2007-04-27 20:05 | オペラ | Comments(0)