おやぢの部屋2
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MOZART/Irrfahrten II, & III
c0039487_21422638.jpgAnn Murray, Malin Hartelius,
Silvia Moi ,Marisa Martins
Josef Wagner, Jeremy Ovenden
Matthias Klink, Miljenko Turk
Marianne Hamre(Narrator)
Graham Smith(Dancer)
Joachim Schlömer(Dir)
Michael Hofstetter/
Chor der Ludwigsburger Schlossfestspiele
Camerata Salzburg
DG/00440 073 4250(DVD)



Irrfahrten」の「第2部」と「第3部」は、このザルツブルクでの公演が世界初演となる、まさにシュレーマーのコンセプトが最大限に発揮された作品になっています。そもそも「第2部」にはモーツァルトのオペラすら登場しません。タイトルは「Abendempfindung」、「夕べの憩い」と訳されるそのモーツァルトのリートが歌手(マレー)によって歌われるのが始まりで、様々な曲の断片が演奏される中、歌手そっくりの衣装とヘアスタイルの女(ハムレ)と男のダンサーがモーツァルトの手紙を読み上げるという趣向です。プロジェクターで映し出されるキャストに合わせて本物のキャストが演じるという複雑な「振り」も、ダンサーはともかくマレーまでも実に良くこなしています。ここでは男のダンサーが白いブリーフ1枚のヌードでダンスを披露したかと思えば、ステージ奥に設けられたプールで泳ぎ出すという、不思議な世界が広がります。合唱も登場しますが、そのメンバーも全て歌手と同じ扮装というのがショッキングです。
いろいろな曲がなんの脈絡もなく続く中で、グラスハーモニカのための曲が集中的に演奏されているのが印象的です。ちょっとシュールなステージを彩る、それは見事なアクセントに聞こえます。
「第3部」ではオーケストラもステージに上がり、全体がダンスフロアといった趣、ハムレもここでは「MC」という役回り、ワイヤードマイクを片手にこれから演奏される未完のオペラ・ブッファのあらすじと配役をDJ風ににぎにぎしく紹介します。もちろん、キャストは殆ど「第1部」に出演した人たち、あのイケメン、トゥルクも、ここでは少しコミカルな役に挑戦です。
ちょうど「後宮」と「フィガロ」の間に作曲されたことになる「騙された花婿Lo Sposi Deluso」と、「カイロの鵞鳥L'oca del Cairo」というオペラ・ブッファは、もし完成されていたならばあのダ・ポンテ・オペラと同様の人気を博していたに違いないと思わせられるほど、その残されたナンバーは魅力に満ちたものでした。「鵞鳥」でそのトゥルクが歌うアリアなど、あのレポレッロの「カタログの歌」を彷彿とさせるものですし、フィナーレの華やかさといったら、まさに楽しさいっぱいのブッファの神髄です。
後半は大勢のダンサーが登場してダンスが繰り広げられます。「ダンス」といっても、これはストリート系のかなり激しい動きのもの、流れるモーツァルトの曲の断片とはビートも曲調もなんの関係もないような印象を与えられるのは、シュレーマーの目指したところなのでしょう。
そして、そんな喧噪が一段落、ダンスがすんだところで合唱によってしっとりと歌われるエンディングが、モーツァルトの絶筆、「レクイエム」です。それは、実際の「絶筆」つまり後のジュスマイヤーなどが管楽器のパートを書き込む前の、作曲者が実際に残した部分だけが演奏されたものでした。それは、以前シュペリングが一つのサンプルとして録音していたことはありますが、それ自体に意味を持たせてこのような形で演奏するのは、CDやDVDに記録された形でリリースされたものとしてはおそらく初めての試みなのではないでしょうか。弦楽器だけの伴奏による「Dies irae」、そして「Lacrimosa」も、「アーメン・フーガ」も途中で未完のまま終わっているものをあえてそのまま演奏する、それこそが、この「遍歴」の終着点にふさわしいというのが、シュレーマーのコンセプトなのでしょう。
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by jurassic_oyaji | 2007-04-30 21:54 | オペラ | Comments(0)