おやぢの部屋2
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MOZART/Così fan tutte
c0039487_20361674.jpgTopi Lehtipuu(Ferrando)
Luca Pisaroni(Guglielmo)
Nicolas Riveno(Don Alfonso)
Miah Persson(Fiordiligi)
Anke Vondung(Dorabella)
Ainhoa Garmendia(Despina)
Nicholas Hytner(Dir)
Ivan Fischer/
Orchestra of the Age of Enlightenment
OPUS ARTE/OA0970D(DVD)



このDVDは、昨年のグラインドボーン音楽祭での公演の映像です。球を拾ったりするんですね(それは「グラウンドボーイ」)。BBCが収録して放送したものがパッケージになったものですが、これと全く同じもの(エンドクレジットも同じ)がNHKのBSハイビジョンでも放送されています。つまり、これはBBCとNHKとの共同制作なので、当然日本でも放送されることになるわけです。DVDではすぐ演奏が始まるものが、放送では最初にきちんと「音楽評論家」が出てきて前説を述べてくれますし、キャストが登場するたびにきちんとテロップが出てその人が誰なのかを教えてくれますから、こんな親切なことはありません。
ただ、その「前説」の中で、オペラに関しては造詣の深いその評論家の先生が、「この上演の歌い手はあまり有名な人たちではないが、その分しっかりリハーサルをしているので、完成度の高いステージとなった」みたいなことをおっしゃっているのを聞いてしまうと、そんな親切も時には仇になってしまうことがあるのだと思わないわけにはいきません。フェランドのレーティプーや、フィオルディリージのパーションなどは、「バロック・オペラ」の世界ではなくてはならない人、その他の人だってCDでのソロは数知れません。ドラベッラのフォンドゥンクなどは、先日のリリンクの「ロ短調ミサ」で絶賛したばかりですし。
しかも、彼らは言われるようなヒマな体ではないことは、2006年の6月末から7月初めにかけて行われたこの公演の直後に、レーティプーは「ツァイーデ」、パーションは「ポントの王ミトリダーテ」のリハーサルのためにザルツブルクへ飛ばなければならなかったことからも分かるはずです。
というわけで、実は売れっ子のキャストが集まったこの公演では、演出のハイトナーは一見なんの衒いもないオーソドックスなステージを作り上げているかに見えます。時代や人物の設定は元のまま、奇抜な「読みかえ」などは皆無です。しかし、そこで演じられているものの密度の高さには驚かされます。ダ・ポンテとモーツァルトが仕掛けた「罠」を、とことんリアリティあふれる演技の中から自然と浮かび上がらせようという強い意志を、そこからは感じることはできないでしょうか。プロット自体は何とも嘘くさいものなのですが、そこで真剣に「ドラマ」を演じることによって、それ自体が雄弁な主張を持ってくるのです。場面転換が非常に手際が良く、全く緊張の糸が切れないことも、大きなファクターでしょう。
その結果、お話の結末はまるでかつてのポネルのもののようなとてつもなく救いようのないものになりました。それは、どのキャストもドラマの中の役割をきちんと実体としてとらえて演じたことにより、ごく自然に導かれる結末だったのです。
ソリストたちは、皆アンサンブルにかけては長けたものを持った人たちばかりですから、デュエットなどの精度の高さには素晴らしいものがあります。それに加えて、ソロも見事、特にレーティプーのちょっとクールな、それでいて感情のほとばしりには不足のない歌いっぷりには感服してしまいます。パーションの深みのある歌も素敵です。
オーケストラは、オリジナル楽器のエイジ・オブ・エンライトゥンメント管弦楽団。この分野での老舗ですが、ここではいささか精彩を欠いているのが気になります。主として木管楽器が、なぜか音程もフレージングも決まっていません。序曲の段階ですでにトラヴェルソは指がもつれている有り様、せっかくのアリアの足を引っ張っている場面もしばしば見られてしまいました。フィッシャーの取ったかなりゆっくりめのテンポでは、このオケは間を持て余しているのではないか、という気がするのですが、どうでしょう。
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by jurassic_oyaji | 2007-05-10 20:37 | オペラ | Comments(0)