おやぢの部屋2
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The Magic Flute
 きのうは、NHKのBS3波で、「ニューヨーク特集」みたいなものをやっていました。「1」では大リーグ(「MLB」ですね)の試合、「2」ではニューヨークがらみの映画、そして「HV」では、なんとMETの新作オペラを4本放映という、太っ腹な企画です。もちろん、私としてはこのオペラをチェックしないというわけにはいきません。
 最近のMETは、オペラの映像をリアルタイムで映画館に配信するということをやっているのだそうです。ハイビジョンの映像を光ケーブルで映画館にデジタル送信、それをスクリーンに映し出すというというものです。アメリカ国内だけではなく、それは世界中に配信されているらしく、日本では松竹と提携して「METライブビューイング」という形で、大々的に宣伝されていましたよね。ちょっと前に「歌舞伎座でオペラを見よう」みたいなコピーで、その歌舞伎座で「魔笛」が見れるというので大きな話題になっていたようでした。実際には、歌舞伎座だけではなく、松竹系のシネコンなどでも上映されていたんですってね。
 きのう放送されたものが、その、歌舞伎座で上映されたという「魔笛」でした。それに先だって放送されたのが、その「魔笛」を演出したジュリー・テイモアという人のインタビューです。劇団四季でも上演しているミュージカル「ライオンキング」を演出した人だというのは知っていましたが、そんな彼女がオペラにまで手を広げるようになったのですね。しかし、このインタビューによって、実はかなり前の「サイトウ・キネン・フェスティバル」での「エディプス王」の演出を小澤征爾から依頼されていた人だということが分かりました。ジェシー・ノーマンが主演したそのプロダクションは、ちょっと期待はずれだった印象を持ったことを思い出しましたが、それがテイモアの最初のオペラ(厳密にはオペラではありませんが)での仕事だったのですね。
 いずれにしても、「ライオンキングでミュージカルを変えた」とまで言われた演出家による「魔笛」、これはいろいろな意味で刺激を与えられるものには違いありませんから、番組表でこれを知った時からとても楽しみにしていました。しかし、いざ録画をしようという時に、上演時間が2時間しかないのがちょっと気になりました。普通に上演すればほぼ3時間というのが「魔笛」のサイズですからね。
 放送の前のテロップによって、そのわけが分かりました。これはテイモア自身の翻訳による「英語版」、そして、「2時間に短縮してある」と、きちんと断っていたのです。しかし、インタビューの中で「誰でも親しめるようなものにした」と語っていたその結果がこういう措置だったのでしょうが、それらは私にとっては失望以外の何者でもありませんでした。「英語版」に関しては、「魔笛」でしたらまあアリかな、ぐらいまでは妥協できますが、「2時間」に関しては到底容認できるものではなかったのです。まず、序曲からしてとんでもないところにカットが入っていて、今まで聴き慣れたものとは全く別の曲でしかないと言う思いに駆られてしまいます。それから先のカットの無惨なこと、「この先はこうなるはず」だと思って聴いていると、突然別の場所に運ばれてしまうという居心地の悪さです。1幕のフィナーレの前のパミーナとパパゲーノのデュエットはまるまるなくなっていましたし。
 「親しみやすいものにする」ためにこんなデタラメなカットを行った意味が、私には全く理解できません。単に私が慣れ親しんだものとの違和感というような次元の話ではありません。モーツァルトの音楽は全く無駄のない形ですでに出来上がっているという完成度の高いもの、そのどこかを削ったりしたら、それだけでバランスを崩して美しさを失ってしまうものなのです。それが分からなかったテイモアは、いかに立派な演劇論を語ったところで、音楽に関してはなんの感受性も持ち合わせていないイモであったことが、このプロダクションを通じて、全世界ネットで暴かれてしまったのです。
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by jurassic_oyaji | 2007-06-17 22:46 | 禁断 | Comments(0)