おやぢの部屋2
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BACH-SCHUMANN/Johannes-Passion
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Veronika Winter, Elisabeth Scholl(Sop)
Gerhild Romberger(Alt), Jan Kobow(Ten)
Ekkehard Abele, Clemens Heidrich(Bas)
Hermann Max/
Rheinische Kantorei, Das Kleine Konzert
CPO/777 091-2(hybrid SACD)



メンデルスゾーンが1829年にベルリンのジングアカデミーで、バッハの「マタイ受難曲」を蘇演したことはよく知られていますし(それまでは疎遠だったんですね)、それをさらに「蘇演」させたシュペリングのCDによって、今ではその全体像が音として聴けるようになっています。同じように、「ヨハネ受難曲」についても、その4年後の1833年には、やはりジングアカデミーでツェルターの後任者のカール・フリードリヒ・ルンゲンハーゲンが演奏をして、その存在自体は人々に知られるようになっていました。しかし、そのときの批評が「『マタイ』よりは劣る作品」というものだったため、そのような評価が一般的になってしまったそうなのです。メンデルスゾーンがこの演奏には全く関わっていなかったというのが、ポイントが低かった原因なのかもしれませんね。
しかし、シューマンは楽譜からこの曲の良さは認めていて、自分が作った合唱団の演奏会には、頻繁に「ヨハネ」の合唱曲を取り上げていたといいます。そして1850年にデュッセルドルフの音楽監督に就任したときには、この曲の全曲演奏を最初の大きなプロジェクトとして掲げ、1851年の4月13日に、それが実現されることになります。
そのときの演奏を再現したものが、このCDということになるのですが、シュペリング盤と違うのは、当時は実際には楽器の都合などで演奏されなかった曲も、カットすることなく全曲演奏しているという点です。つまり、シューマンのスタイルを伝えることが目的ではあっても、厳密な「記録」ではなく、あくまで作品として完成された形で聴いてもらいたいという気持ちが込められた結果なのでしょう。
このシューマン・バージョンの最大の特徴は、楽器編成であることは、メンデルスゾーンの場合と共通しています。バッハが用いた19世紀にはもう姿を消していた楽器、例えばオーボエ・ダ・カッチャなどはクラリネットで代用されています。しかも、それは19世紀に於ける「モダン楽器」なわけですから、21世紀に演奏されれば「ピリオド楽器」となるという複雑な事情が伴います。さらにこの楽器は、他の楽器の代用だけではなく、オーケストレーションの上でもユニークな役割を担っているのが、メンデルスゾーンとは微妙に異なる点です。それは、例えば新全集の9番のソプラノのアリアで聴けるのですが、本来は通奏低音にフルートのオブリガートという、いかにもバロック的な編成の中で、このクラリネットが内声を埋めるために使われているという、まさにロマンティックな役割です。オルガンなどで即興的に埋める声部を、シューマンはきちんと譜面に書いたのです。
30番の有名なアルトのアリア「Es ist vollbracht!」では、さらにダイナミックな手が施されます。ヴィオラ・ダ・ガンバのオブリガートはヴィオラのソロに代わり、そのまわりを弦楽器のアンサンブルが彩るという「現代的」なアレンジ、中間部の勇ましい部分にはトランペットまでが加わるという華やかさです。
しかし、最も興味を惹くのは、レシタティーヴォの低音にピアノ(ピリオド楽器ですから、フォルテピアノ)が用いられていることではないでしょうか。その確固たる音色と、名人芸的な音型によって、エヴァンゲリストの音楽はとてつもなくドラマティックなものに変わりました。それに見事に応えたのがテノールのコボウ、バッハの受難曲のレシタティーヴォで、これほど劇的な表現が聴けるのは、まさにシューマンのロマンティシズムのなせる業です。同じように、群衆の合唱もその濃厚な表情付けはロマンティック・エラならではのもの、マックスたちは確かにシューマンの時代の「ヨハネ」の有り様を、その精神までをも再現することに成功しています。
これだけ大変な演奏を要求されるためでしょうか、テノールのアリアはレシタティーヴォ風のアリオーソを除いて、全て他の人が歌うようになっています。しかし、その大半を任されるはずの第2ソプラノ、ショルのあまりのひどさには思わずのけぞってしまいます。合唱のソプラノパートの弱さともども、この名演の足を引っ張ってしまっているのが残念です。
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by jurassic_oyaji | 2007-06-18 20:46 | 合唱 | Comments(0)