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Minimal Piano Collection
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Jeroen van Veen(Pf)
BRILLIANT/8551



このレーベルのことですから、「ミニマル・ピアノ・コレクション」などというタイトルが付いていればそれこそあちこちのレーベルから寄せ集めた「ピアノ小曲集」ではないかと思ってしまいます。ところが、なんとこれは「ミニマル・ミュージック」というジャンルのピアノ曲を集めたボックス・セットだったのです。しかも、録音は2006年の10月、機材も最新のものが使われた贅沢なものです。フィリップ・グラスやマイケル・ナイマンといったミニマル界の大御所をはじめ、ごく最近のオランダのほとんど知られていないような作曲家の作品など、ミニマル尽くしの9枚組、そんなものが4000円程度で手に入ってしまうのですから、これは絶対お買い得。
しかし、このセットにはさらなるサプライズが潜んでいました。この録音のプロデューサーでもあるファン・フェーンが演奏している楽器は、あの「ファツィオリ」だったのです。この前の斎藤さんの本でも取り上げられていたこのイタリアのピアノの評判はあちこちで聞きますが、まだ録音ですらその音を聴いたことはありませんでしたから、これは何よりのことです。いよいよ4000円では安すぎ。恐るべし、BRILLIANT
初めて聴いたその「ファツィオリ」は、何という味わい深い音だったことでしょう。大げさな言い方をすれば、まさに「ピアノ」という楽器の音に対するイメージを根底から覆させられたほどの驚きが、そこにはありました。高音はあくまでしなやか、そこからは演奏者の息づかいさえも感じられるほどですし、低音のなんと暖かく包容力に富んでいることでしょう。スタインウェイなどを聴き慣れた耳にはショッキングなほどのその音色、ぜひ、いつか生で聴いてみたいものです。
このボックスの中では、4枚目のものがなかなか聴き応えがあります。一般的には「ミニマル・ミュージック」の始まりは1958年に作られたラ・モンテ・ヤングの弦楽三重奏曲だということになっているそうですが、ここにはその先駆けともいえるエリック・サティの「ヴェクサシオン」(1893)とともに、同じ19世紀後半の作品であるフリードリッヒ・ニーチェの「Das 'Fragment an sich'(『そのまんま切れっ端』でしょうか)」という珍しい曲が収録されているのです。もちろん、あの「ツァラトゥストラ」のニーチェですが、熱心なワーグナー・ファンであった彼は、自らも曲を作っていたのですね。これが、ワーグナー風のロマンティックな曲なのかと思いきや、タイトルの通りいくつかのモチーフが「切れっ端」として何度も繰り返し登場するという紛れもない「ミニマル・ミュージック」なのですよ。
もう一つ、この中に入っている興味深い曲が、シメオン・テン・ホルトというオランダ人の作品です。実はこの人は、このレーベルから複数のピアノのための作品集(7795)が11枚のセットで出ており、
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そこにもファン・フェーンは参加しています。この「ソロデヴィルダンスIV」という曲は、「ミニマル」と言われて連想しがちな「シンプル」なものとはちょっと異なる、かなり技巧的なもの、そこからはショパンやリストといったピアニストたちの流れが見え隠れするほどです。アメリカで隆盛を誇ったこの音楽は、ヨーロッパの伝統と結びついてこんな形のものまでが生まれていたのですね。「ミニマル」の裾野の広さを見た思いでした。
ファン・フェーン自身の作品も2枚にわたって収録されています。それは「24のプレリュード」。バッハの「平均律」のように、全てのキーの長調と短調による、5分程度の曲が集まったものです。これは「ミニマル」と言うよりは「ヒーリング」と言った方がぴんと来る作風、それぞれの曲にさまざまなアイディアが秘められていて楽しめます(さすがに「ファンファーレ」はありませんが)。
こういうものには欠かせないスティーヴ・ライヒの作品が1曲もないのは、彼には「ソロ」のピアノ曲がなかったせいなのでしょうか。9枚目の最後には、テリー・ライリーの「in C」が、「Pro Tools」を駆使した多重録音で演奏されているというのに。
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by jurassic_oyaji | 2007-06-24 20:11 | 現代音楽 | Comments(0)