おやぢの部屋2
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LANSKY/Etudes and Parodies
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William Purvis(Hr)
Curtis Macomber(Vn)
Mihae Lee(Pf)
David Starobin(Guit)
The brentano Quartet
BRIDGE/BRIDGE 9222



ポール・ランスキーという、1944年生まれのアメリカの作曲家の名前は、こちらで馴染みがありました。ここでは「電子音楽」という範疇の作品が集められていたのですが、ランスキーのトラックではサンプリングをした女声を重ねた、心地よいコーラスのようなものがエントリーされていたのです。それは、決して「電子音楽」と言われて想像されるような頭でっかちな音楽ではない、すんなり心に入り込んでくるものでした。
このアルバムは、そんなランスキーの最近の作品が収められたものです。コンピューターなどを駆使して作曲を行っていた彼も、50歳を迎える頃から普通に五線紙に書いていく音楽を作るようになったといいますが、ここにはそんなアコースティックな編成の曲が集められています。
彼は、このレーベルから多くのアルバムを出してきましたが、そのジャケットがなかなか魅力的、これもなかなか味のあるものです。収録されている曲に使われている楽器をすべて合成したような不思議な楽器が目を引きます。ちょっとわかりにくいかもしれませんが、ギターのネックのそばには作曲家の不気味な笑い顔が。
1曲目は、ホルン、ヴァイオリン、ピアノという、ブラームスあたりが好みそうな編成による「エチュードとパロディ」という曲です。小さな曲が7つほど集まっていますが、その1曲目でやはりブラームスのパロディが聞こえてきたのには、嬉しくなってしまいました。さまざまな曲想のものがその後に続きますが、リズムのはっきりしたロックのようなテイストの曲も多く見られます。このあたり、作曲者の「地」の趣味が反映しているのかもしれません。最後の曲が「パヴァーヌ・ノワール」というタイトル。ホルンで「パヴァーヌ」といえばこれしかないという、ラヴェルの「亡き王女のためのパヴァーヌ」の、見事なパロディになっています。
パロディというコンセプトは、他の曲の中にも貫かれています。2曲目はギター・ソロのための「セミ・スイートSemi-Suite」。「ちょっとした組曲」といった趣でしょうが、もちろん「Semi-Sweet」とかけていることは明らかです。ビキニの女性は出てきませんが(それは「セミ・ヌード」)。これはもろバッハのギター(リュート)組曲のような雰囲気を醸し出している曲です。それぞれのタイトルが、又ちょっと人を食ったもの、「うわさの前奏曲」、「でたらめなアリア」、「いびつなクーラント」、「ハレンチなサラバンド」、「ぶざまなアルマンド」、「ある意味パヴァーヌ」といった具合です。とは言っても、音楽としてはとても爽やかなギター(もちろん、クラシックギター)の音色と相まって、しっかりとしたエモーションを受け取ることの出来る内容の濃いものです。中でも「サラバンド」の「甘い」美しさといったら。ちなみに、演奏しているスタロビンは、このレーベルのオーナーです。
最後は弦楽四重奏による「リチェルカーレ・プラス」です。最初は「リチェルカーレ」だけが作られましたが、後に「プレリュード」と「ポストリュード」を前後に加えて、このようなタイトルに改作されたものです。その後から作られた部分は、おそらくアルヴォ・ペルトのパロディなのでしょう、ビブラートをたっぷりかけた弦楽器が、神秘的な和音をとうとうと奏でるさまはとても印象的な仕上がりです。もしかしたら、ランスキーがかつて見せていたサンプリングの確かな延長上にあるのかもしれないこの部分は、ストイックな「リチェルカーレ」と見事な対象を形作っています。
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by jurassic_oyaji | 2007-07-18 19:56 | 現代音楽 | Comments(0)