おやぢの部屋2
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And on Earth, Peace
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Chanticleer
WARNER/8122-79984-4



クレジットを見て気が付いたのですが、このシャンティクリアの最新アルバムのレーベルは、「WARNER」とともに「RHINO(ライノ)」という名前が併記されています。RHINOといえば、かつては信じられないほど音の良いオールディーズのリマスター盤を出していたことで知られていた、クラシックとはまず縁のないレーベルだったはずですが、いつの間にかWARNERの傘下に入って、こんな風にクラシックも扱うぐらいのことをやるようにもなっていたのですね。
果たしてシャンティクリアが「クラシック」かどうかというのは議論の分かれるところですが、このアルバムに関しては紛う方なきクラシックでしょう。何しろこれは「シャンティクリア・ミサ」というタイトルの「ミサ」なのですからね。この団体の創設者であるルイス・ボットが亡くなって10年経つことを機会に、5人の作曲家にミサのそれぞれのパートを分担して委嘱したというものです。そして、そのオリジナルの曲の間に、昔からの曲、たとえばアンドレア・ガブリエリやジェズアルドの作品を挟み込んで、最終的には演奏に1時間15分を要する立派なミサ曲に仕立て上げました。
最初に聞こえてくるのは、グレゴリオ聖歌の単旋律の世界です。まず印象的なのは、録音場所であるジョージ・ルーカスの「スカイウォーカー・サウンド」の、とても芳醇な残響です。ただ、その芳醇さには石造りのチャペルなどで味わえるものとはかなり肌触りの異なる、なにか人工的なものが伴います。それは、もしかしたら過去のミサ曲からの決別を知らしめるための、意図した処理だったのかもしれません。
Kyrie」は、「Sex And The City」という人気テレビドラマの音楽など幅広い分野で活躍しているアメリカのダグラス・クオモが作りました。導入にいきなりシュプレッヒ・ゲザンクっぽいものが現れるのには驚きますが、「Kyrie eleison」の部分は先ほどのプレーン・チャントのようなものをソロが歌い、合唱がそれに応えるというシンプルなものです。中間部の「Christe eleison」ではうってかわって不安な和声とリズムに支配されるのが、アクセントになっています。
トルコ系のカムラン・インスが作った「Gloria」は、普通この曲が持っている華やかさが一切排除された、淡々とした音楽です。イスラム教のテキストを英語に訳したものが、オリエンタルな音階に乗って果てしなく続くというものです。ただ、「Moslems and Christians and Jews raising their
hands to the sky
」という歌詞の部分で力強さが感じられるのは、ここにある種のメッセージが込められているせいなのでしょうか。
シュラミット・ランの「Credo」は、ヘブライ語のテキストで始まります。おそらくこの「ミサ」の中では最もダイナミックな構成を持つ、いかにも主張するところの多い「合唱曲」という趣です。後半に英語で歌われる部分では、やはりメッセージ性の高いテキストが語られます。
Sanctus」を作ったイヴァン・ムーディはギリシャ正教などの東方教会に多くの影響を受けた人。ここでもギリシャ語のテキストで「東方」っぽく迫ります。
Agnus Dei」は、ケルト語で歌われます。ダブリン生まれのマイケル・マグリンの音楽は、独特の節回しと歌い方を持った、まさにケルト音楽そのものです。しかし、後半のラテン語のテキストの部分になると、それがもろミニマル・ミュージックに変わります。同じフレーズが果てしなく繰り返される「Dona nobis pacem」での長~いフェイド・アウトの果てに、冒頭のプレーン・チャントが、今度はハーモニーを伴って現れる頃には、「我らに平和を与え給え」というメッセージは体中に染み渡っていることでしょう。
さまざまなバックボーンを拠り所に作られていても、訴えるものは一つ、それが現代における「ミサ」の一つの形なのかもしれません。
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by jurassic_oyaji | 2007-07-20 21:12 | 合唱 | Comments(0)