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Sgt. Hetfield's Motor Breath Pub Band
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Beatallica
OGLIO/OGL89144-2



ご存じ「ザ・ビートルズ」ほど、その楽曲が多くの人にカバーされているバンドもありません。「Yesterday」などは、軽く100を超えるカバーバージョンが存在するのだとか。こうなると殆ど「名曲」としての扱い、もっと言えば「パブリック・ドメイン」と言っても差しつかえないほどの浸透ぶりなのではないでしょうか。もちろん、彼らの著作権が「パブリック」の所有物になることは当分あり得ませんから、その権利を巡ってはすさまじい争奪戦が繰り広げられていたようです。かつてマイケル・ジャクソンが所有していたほぼ全曲分の権利は、今ではソニー・レコードに移っているのだとか。「名曲」がビジネスとして売り買いされるのを見ているのは、なにか辛いものがあります。
「名曲」ゆえに、彼らの曲はクラシック関係でも多くのカバーや編曲作品を産んでいます。通奏低音付きの弦楽合奏という、あたかもバロック音楽のような編成で典雅に演奏される「Let It Be」などは、その元ネタであるパッヒェルベルのカノンすらも押しのけて、殆どヒーリング・ナンバーの定番としての地位を獲得しているかに見えます。あるいは、単旋律のユニゾンで歌われれば、それはグレゴリオ聖歌と寸分違わない静謐な姿を現すのです。
これらのカバーは、ビートルズの曲の持つメロディアスな面を強調して作られていますから、私たちはもっぱら「ビートルズもクラシックと変わらないきれいな曲なのよね」という印象を持つことになります。たとえそこからは強烈なビートや歌詞に込められた屈折したメッセージが何も伝わってこなくても、「きれいな音楽」としてのクラシックの仲間に取り込んで、ひとときの満足感に浸るのでしょう。
そのような軟弱なアプローチとは正反対のベクトルで、ビートルズをカバーしたバンドが現れました。それは、元来ロックバンドであったはずのビートルズを、より「ロック」としてデフォルメする試みです。そのために、そのバンドはギンギンのヘビメタ・バンドである「メタリカ」のテイストで、ビートルズをカバーしたのです。当然のようにそのバンドの名前は「ビータリカ」となりました。これほどベタなネーミングも、直球勝負のヘビメタならではのものでしょう。田中星児がヴォーカルだと「ヤンチャリカ」。
そもそも彼らがこのような活動を始めたのは5年以上前のことです。もっぱらインターネットからのダウンロードという形で楽曲を公開、広範な支持を得てライブなども行っています。それこそ「権利」を巡っての横やりから、サイトは一時閉鎖されたものの、今では復活、このように堂々とパッケージとしてのCDを出すに至ったということです。もちろん、このCDにはネット配信されていた音源ではなく、2006年から2007にかけて新たに録音されたテイクが収録されています。
単にアレンジだけではなく、曲のタイトルや歌詞までも、彼らは「メタリカ風」に変えています。タイトル曲はもちろん「Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band」、ヴォーカルがポールより1オクターブ低いドスのきいた声で歌い始めれば、いやでもおどろおどろしいヘビメタの世界へ誘われないわけにはいきません。しっかりオリジナル通り、次の曲へのブリッジまで演奏しているのが憎いところ。
A Garage Dayz Nite(=A Hard Day's Night)」では、彼らの「ヘビメタ化」の方法論が明らかになります。この曲のリリカルさを象徴しているのが「And when I'm get home to you」という歌詞の部分の半音進行のメロディです。さらにこのメロディが並行3度のハーモニーに彩られて、そのリリカルさは際立ちます。ビータリカが行ったのは、その前半、アウフタクトの「And when I'm」の部分を丸ごとカットするということでした。その結果、この曲はリリシズムのかけらもないヘビメタへと変貌したのです。
Helvester Of Skelter(=Helter Slelter)」はビートルズ自身がヘビメタを目指して作った曲。ビータリカはその先輩に向かって、「ヘビメタって、本当はこうやるんだぜ」と意気込んでいるように聞こえます。
by jurassic_oyaji | 2007-07-22 21:53 | ポップス | Comments(0)