おやぢの部屋2
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Eternal Light
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Elin Manahan Thomas(Sop)
Harry Christophers/
The Orchestra of the Age of Enlightenment
HELIODOR/4765970



キャメロン・ディアスやキルステン・ダンストを引き合いに出すまでもなく、青い瞳にブロンドの髪の女性というのは、ほとんど女神にも等しい美しさを秘めているものです。このジャケットを彩るマスクも、なんという魅力を放っていることでしょう。もっとも、これだけ大きく目を見開かれてしまうと、ちょっとした不気味さのようなものも漂ってきますが。
もちろん、この写真の主はモデルや女優ではなく、エリン・マナハン・トーマスというれっきとしたソプラノ歌手です。この度UCJ(ユニバーサル・ミュージック・クラシックス&ジャズ)が立ち上げたボーダーレスのレーベル「HELIODOR」の最初のアーティストとして、華々しいデビューを飾りました。おそらくLP時代からのクラシック・ファンであれば、この「HELIODOR」という名前はDGの廉価盤レーベルとして記憶に残っているに違いありません。CDが登場してしばらく見かけなかったと思っていたら、こんな形で「復活」してきましたよ。しかし、先日の「EDGE」といい、ユニバーサルは最近新しいレーベルに熱心ですね。そのうち、プッチーニのアリア集でも出すのでしょう(熱心・ドルマ)。
マナハン・トーマスというソプラノは、例えば「ザ・シックスティーン」や「モンテヴェルディ合唱団」にメンバーとして参加、数多くの録音を残しているというプロフィールが知られています。その一方で、こちらでご紹介したジョン・ラッターの「レクイエム」では、ソリストとしてセッションに参加しています。2002年に録音されたこのアルバムを聴く限りでは、その「無垢な声」には、たとえばエマ・カークビーに通じるほどの確かな魅力がありました。
それから5年の時を経て、晴れて彼女のソロアルバムの登場です。ラインナップは彼女が最も得意としているアーリー・ミュージックの名曲たち、バックを務めるのは「ザ・シックスティーン」での知己、クリストファーズの指揮によるエイジ・オブ・エンライトゥンメント管という、最高の布陣です。
しかし、最初のトラックはそのオーケストラを伴わない、無伴奏による歌でした。それはヒルデガルト・フォン・ビンゲンの「O Euchari」、この曲が最初に歌われたことによって、彼女が目指しているものがなんであるかが明らかになります。この中世の尼僧のシンプルなメロディは、まさにアーリー・ミュージックのエキスとも言えるものです。そんなジャンルの歌い手の先駆けであるカークビーその人の後継者たることを、この曲によって高らかに宣言したと感じることは、それほど見当はずれではないはずです。
確かに、そのピュアな歌声には、カークビーさえ持ち得なかった「色気」のようなものすら漂っていました。しかし、しばらく聴き続けていると、その「色気」の源はかなりはっきりしたビブラートであることが分かってきます。これはラッターの時にはそれほど目立たなかったもの、もはや「無垢」からはかなりの隔たりがある声になっていることを、いやでも認めないわけにはいきません。
さらに聴き進んでいくうちに聞こえてきたのは、ヘンデルの「リナルド」の中のアリア「私を泣かせて下さい」でした。そこまで来ると、もしかしたら彼女が目指しているものは、カークビーではなかったのでは、という思いに駆られます。そう、このアリアを一躍有名にしたサラ・ブライトマンこそが、彼女の目標ではなかったのか、と。
7曲目にはヴィヴァルディの「春」に歌詞を付けたものが歌われます。一瞬、それこそサラのような安直な編曲かと思ってしまいますが、実はこれは作曲者自身が「嵐の中のドリッラ」というオペラの中の合唱曲「そよ風のささやきに」に「春」の素材を転用したものなのです(良く聴くと、後半のメロディが微妙に異なっています)。このバージョンは1999年にリリースされたバルトリのアルバムで聴くことが出来ますが、それをソロヴォーカル用にアレンジして聴かせるというあたりが、このレーベルの指向性なのでしょう。彼女にはもっと輝かしいスターに育っていって欲しいものです。
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DECCA/466 5692

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by jurassic_oyaji | 2007-08-05 22:18 | オペラ | Comments(0)