おやぢの部屋2
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Corpus Christi
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MEMBRAN/231061



いつぞやのレクイエムばかりを集めたボックス・セットに続いて、同じレーベルがこんなボックスを出しました。前回同様10枚組、お値段は1700円と、殆どタダ同然です。
まず、ジャケットのかわいらしい写真が目を引きます。「かわいらしい」などと言ったら不謹慎なのかもしれませんが、十字架に磔になっているキリストは針金細工、ここまで抽象化されると、もはやオブジェのように見えてはきませんか?手のひらに打ち付けられた釘が、見事なまでにハマっています。余談ですが、「劇団四季」の演目、ロイド・ウェッバーの「ジーザス・クライスト・スーパースター」では、ジーザス(イエス)役の人は、実際に手のひらに釘を突き刺されて十字架に固定されます。本当ですよ。というか、オペラグラスを使ってその手元を何度も確認してみたのですが、いくら見ても実際に刺さっているようにしか見えません。あれはいったいどんなトリックになっているのでしょうか。
今回は、そんなキリストの受難をテーマにした「マタイ受難曲」が、メインの曲目になっています。有名なバッハの作品だけではなく、シュッツとテレマンのものが収録されているというあたりが渋いところです。この作品の様式の変遷なども踏まえつつ、聴き慣れたバッハだけではない広がりを実際の音として体験できる、貴重な選曲です。テレマンは、彼の数ある「マタイ」の中の1754年に作られたもの、なかなか耳にする機会はないはずです。バッハのようなアリアはなく、殆どレシタティーヴォと合唱で進んでいくという、ある意味淡々とした構成、バッハでおなじみの「受難のコラール」も登場します。
このレーベルの常で、演奏のレベルが必ずしも高くない点も、一つの時代的なサンプルの代償として大目に見ようではありませんか。例えばバッハの中では、ついこの間聴いたばかりのビラー盤で圧倒的なエヴァンゲリストとアリアを聴かせてくれたペツォルトの10年前の初々しい声を聴くことなども出来ますし。
その他のラインナップとしては、通常のミサ曲などと並んでマーラーの交響曲第2番や、オルフの「カルミナ・ブラーナ」なども加わっているというあたりが、このレーベルならではの胡散臭さです。「カルミナ・ブラーナ」などは、これ以上は望めないという緊張感のなさ、世の中、必ずしも完璧な演奏を目指す人ばかりではないのだな、という、なにかホッとした気持ちにさせられるものですよ。
「宗教曲」とは言っても、声楽を伴わないインスト・ナンバーもあります。そんな、モーツァルトの「教会ソナタ」が入っていたのが、実は最も嬉しいことでした。教会での礼拝の際に演奏される1楽章だけの文字通り「ソナタ形式」で出来た合奏曲ですが、その中にオルガンが加わっているのが大変魅力的。全部で17曲ほど残されていますが、それぞれのオルガンの扱い方が微妙に異なっていて、楽しめます。初期のものは殆ど通奏低音のような使われ方ですが、次第に一つのパートとして管楽器のような存在を主張し始めます。さらに、最後に作られたK336は、完全なオルガン協奏曲の形態をとったもの、モーツァルト唯一のこの楽器のための協奏曲として、愛好家にはたまらないアイテムです。
ここで演奏しているメンバーのクレジットは、誰がソリストで誰が指揮者なのか皆目分からないといういい加減なもの、もっといい加減なのは、必ずしも番号順に演奏されてはいないのに、演奏順がそのまま作品の番号になっているということです。先ほどのK336も本来は「17番」のはずが「14番」などと表記されていますから、ご用心。ひょっとしたら各パート一人だけのアンサンブルなのでは、と思わせられるようなちょっと貧弱なサウンドも、元々CDの少ないこの曲の貴重な録音だと思えば、全く気にはなりません。
by jurassic_oyaji | 2007-08-09 20:17 | 合唱 | Comments(0)