おやぢの部屋2
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KORNGOLD/The Sea Hawk
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Irina Romishevskaya(Sop)
William Stromberg/
Moscow Symphony Orchestra
NAXOS/8.570110-11



NAXOSの「Film Music Classics」というシリーズは、古典的な映画のサントラを最新の録音で蘇らせるというなかなか力の入った企画です。今回のコルンゴルトの「シー・ホーク」にはさらにものすごい力が込められていて、もはやオリジナルのスコアやパート譜は残っていないこの映画の音楽を、丸ごと「修復」するという荒技を披露してくれています。しかも、上映の際にはカットされたものとか、予告編のために作られた音楽なども合わせた「完全版」、トータルで115分もの長さのものに仕上がりました。当然CD1枚には収まらずに2枚組となっています。もちろん、こんなものは世界初録音に決まってます。しかも、余白の30分にはコルンゴルトが音楽を付けた最後のハリウッド映画、「Deception(邦題:愛憎の曲)」のためのすべての音楽が収録されています。こちらも世界初録音です。
ここで、スコアの「修復」を担当したのは、ハリウッドでも活躍している作曲家、ジョン・モーガンです。実際に彼が行った仕事の結果を聴くと、まるで今作られたばかりのような、そう、例えばジョン・ウィリアムズのスコアが作り出す絢爛豪華なサウンドが響き渡るさまを体験できますこあ。もちろん、事実は全く逆なわけで、ジョン・ウィリアムズこそが、コルンゴルトのサウンドを模倣して現代のスクリーンに蘇らせた張本人なのですがね。
そうは言ってみても、やはりこの「新しさ」は、あまりにも「現代的」過ぎるような気にはならないでしょうか。この曲に関しては、このページでも今までにプレヴィンゲルハルトによる2種類の録音を取り上げています。それらがどのようなソースを用いて演奏されていたのかはわかりませんが(プレヴィン盤には、いちおう編曲者の名前が明記されていました)、今回聞き比べてみると、明らかにオーケストレーションが異なっている部分が見うけられるのです。それは、例えば「メイン・テーマ」の中間部、甘美なストリングスのメロディをフルートの細かい音型が彩るという、まさにジョン・ウィリアムズそのものっぽい部分なのですが、このフルートのオブリガートが、今回のモーガンのオーケストレーションでは、とても目立って聞こえてきます。良く聴いてみると、ここではフルートにグロッケン(あるいはチェレスタ)が重ねられていることがわかります。これは、前の2種類の録音では聴くことの出来なかった特徴です。
そんな具合に、おそらくモーガンはオリジナルのスコアにはなかったような小技を駆使して、コルンゴルトのサウンドをさらに輝かしいものに「修復」したのではないか、と思われてしょうがありません。ジョン・ウィリアムズが「ハリー・ポッター」で頻繁に用いたチェレスタの音色が、ここではとても目立って聞こえてくるあたりが、もしかしたらモーガンの隠し味の正体なのかもしれません。これは、コルンゴルトの原点であるR・シュトラウスが「薔薇の騎士」の中で見せてくれたこの楽器の使い方とは、かなり方向性が違うように思えるのですが、いったい事実はどうだったのでしょうね。
いずれにしても、それほど機能的とは思えないこのロシアのオーケストラ(最初のテーマの金管のもたつきぶりったら)が、サウンド的にはとてもスペクタクルなものを聴かせてくれているのですから、これはなかなかすごいスコア、そして録音です。
もう1曲の「愛憎の曲」では、うってかわって甘美な世界が広がります。この映画のストーリーは、音楽家の三角関係だとか、ひょっとしたら画面が音楽に負けてしまっていたのかもしれませんね。映画の中で演奏される「チェロ協奏曲」(後に、「本物の」協奏曲となります)には、千住明の「宿命協奏曲」(リメーク版「砂の器」ですね)などとは次元の違う本物の才能の煌めきが感じられます。
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by jurassic_oyaji | 2007-08-28 00:21 | オペラ | Comments(0)