Henry Fairs(Org)
NAXOS/8.557924
デュリュフレという人は極端に作品の少ない作曲家でした。なんせ、生前に出版されたものに付けられた作品番号の最後のものは「
14番」なのですからね。それは、
1976年に作られた「われらが父
Notre Père」という合唱曲ですが、実は彼の作曲活動は、その一つ前、「作品
13」であるオルガン曲「顕現節の入祭唱への前奏曲
Prélude sur l'Introit de l'Epiphanie」が作られた
1961年頃で実質的には終わっていたのでした。
その中で、オルガンのための作品は、作品番号が付いているものが全部で6曲あります。作品2(
1926)の「スケルツォ
Scherzo」、作品4(
1930)の「前奏曲、アダージョと、『来たれ創造主なる精霊』によるコラール変奏曲
Prélude, Adagio et Choral varié
sur le thème du 'Veni Creator'」、作品5(
1933)の「組曲
Suite」、作品7(
1942)の「アランの名による前奏曲とフーガ
Prélude et Fugue sur le nom d'Alain」、作品
12(
1962)の「ソワソン大聖堂のカリヨン時計の主題によるフーガ
Fugue sur le thème du Carillon des
Heures de la Cathédrale de Soissons」、そして、先ほどの作品
13です。
昨年、
2006年はデュリュフレが没してから
20年という記念の年に当たっていたため、世界各地で「レクイエム」(これは「作品9」にあたります)が演奏されていたということは、以前にご紹介しました。さらに、合唱曲と並んで彼のもう一つの主要な作品群であるオルガン曲についても、同じように盛り上がりを見せているのが、このところのCDのリリース状況からうかがい知ることができます。何しろ、2ヶ月連続して新譜として「オルガン曲全集」が発売されたのですからね。いかなる理由にせよ、これはファンにとっては嬉しいことに違いありません。
先に発売になった
INTRADAのワルニエ盤の「全集」には、この6曲がすべて収録されています。さらに、今回の
NAXOSにも、すでに
1994年にエリック・ルブランによって録音された、「作品
13」をのぞく5曲による「ほぼ全集」がありました(これは、「レクイエム」などの合唱曲も集めた、2枚組です)。こんなレアなものを2度も制作するなんて、このレーベルは、なんとも不思議なヴァイタリティにあふれたところのような気はしませんか?
今回のイギリス人オルガニスト、ヘンリー・フェアーズによる「全集」では、作品番号が付けられていないものがあと2曲収録されているというのが、まず嬉しいところです。
1964年に作られた「瞑想曲
Méditation」は、出版されたのが
2002年ですから、当然ルブラン盤に収録するのは困難でした。もう1曲は、「ジャン・ガロンへのオマージュ
Hommage à Jean Gallon」という、
1953年に作られた和声課題をオルガンで演奏したものです。このガロンというのは、デュリュフレの和声の先生です。カイロではありません(それは「
ホカロン」)。
その、珍しい「瞑想曲」が、とてもキャッチーなテーマで、瞬時に惹かれるものがあります。古くはフランクあたりから始まったようなフランス風の流れをしっかり受け継ぎ、そこにさらに古風なテイストが添えられているのが素敵です。そこには、メシアンとはまた違った意味での「瞑想」の形があります。
「レクイエム」のファンでしたら、「作品4」や「作品7」の「プレリュード」が「ツボ」なのではないでしょうか。独特の混沌とした雰囲気は、まさにあの名曲を彷彿とさせるものです。「作品5」の「トッカータ」のダイナミズムも、おなじみの世界です。
楽器のせいなのか、あるいはイギリス勢で固めた演奏家と録音チームのせいなのかは分かりませんが、幾分お上品な仕上がりになっているサウンドには、ちょっと物足りなさを感じます。デュリュフレには、ルブラン盤で聴かれたような原色が勝った音の方が似合います。