おやぢの部屋2
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BINGHAM/Choral Music
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Thomas Trotter(Org)
Fine Arts Brass
Stephen Jackson/
BBC Symphony Chorus
NAXOS/8.570346



ジュディス・ビンガムという、1952年生まれのイギリスの女性作曲家の合唱作品集です。彼女は作曲とともに声楽も学んだ人で、10年以上もBBCシンガーズ(ここで演奏しているBBCシンフォニー・コーラスとは別団体)のメンバーとして、合唱団の中で歌っていたこともあるそうです。若い頃から彼女の作品は注目されていて、1970年代にはあのキングズ・シンガーズやピーター・ピアーズなどからも曲の委嘱を受けています。
彼女の作曲技法は、前衛的な書法などは全く見られない、ごくオーソドックスで聴きやすいものです。しかし、もちろん現代作曲家ならではのこだわりは各所で見いだすことはできます。その最も成功したと思えるものが、2曲目の「The Darkness Is No Darkness」ではないでしょうか。この曲は、実は19世紀イギリスの教会音楽家セバスティアン・ウェズリーのアンセム「Thou Wilt Keep Him in Perfect Peace」が元ネタになっています。イザヤ書や詩篇をテキストにしたこの心地よいハーモニーの曲を、ビンガムはテキストを多少入れ替えた上で、ハーモニーに特別な処理を施しました。元の曲親しみやすい雰囲気をそのままに保つのと同時に、そこにちょっと不思議な和声を忍び込ませるということをやっているのです。初めて聴いた人は、新しい響きにもかかわらず、なにか懐かしいものがその中に潜んでいることに気づくことでしょう。そして、それに続いて、今まで無伴奏で歌われたところにオルガンの伴奏が入って、オリジナルのウェズリーの曲が休みなく演奏されることによって、それまで感じていた懐かしさの拠り所を知ることになるのです。
全くの余談ですが、このように2つのものを続けて演奏することを音楽用語では「セグエSegue」と言います。髪の毛が逆立つことですね(それは「ネグセ」)。ですから、ジャケットの曲目紹介にはさっきの2つのタイトルの間に、この「Segue」が入っていて、この2つの曲が続けて演奏されることを示しています。ところが、このレーベルは輸入盤にもかかわらず、全てのアイテムに日本語の帯が付けられていて、簡単な解説が読めるということで好評を博しているものなのですが、その解説を書いた人が、このタイトルをそのまま「直訳」しているのです。「闇もあなたに比べれば-セグエ-永遠の平和を彼にもたらせたまえ」といった具合です。「セグエ」という言葉を知っている人など殆どいないはずですから、これだと何のことだか分かりませんよね。もしかしたら、解説を書いたライターさん自身も知らなかったのかもしれませんね。そう言えば、ここに書いてある解説も、なにか見当外れで本当に知りたいことがなにも分からないといういい加減なものでした。こんな仕事をしていたら、そのうちクビになってしまうのではないかと、他人事ながら心配になってしまいます。
もう1曲、アイディアに満ちた作品が1曲目の「Salt in the Blood」です。これは合唱にブラスアンサンブルが加わった編成、双方のダイナミックな表現力を駆使して、さまざまに変化する海の情景を描いています。最初は穏やかだった海が大嵐に見舞われ、それが収まるとともに霧に覆われ元の静寂に戻るというものです。合唱パートのバックグラウンドには、よく知られたシー・シャンティが用いられているというのが親しみやすさを産んだ要因となっています。
最後に収録されているのが、2004年の「プロムス」のために委嘱された「The Secret Garden」という、やはりブラスアンサンブルの入った大曲です。しかし、なぜかそれほどの感銘を受けることがなかったのは、あのロイヤル・アルバート・ホールに満ちあふれているおおざっぱな雰囲気が、この曲の中につい反映されてしまったせいなのかもしれません。
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by jurassic_oyaji | 2007-09-02 19:41 | 合唱 | Comments(0)