おやぢの部屋2
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音楽でウェルネスを手に入れる
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市江雅芳著
音楽之友社刊
ISBN978-4-276-12251-2


「ウェルネス」という言葉、医療関係や介護関係ではよく使われているようですが、少なくとも「音楽」の世界ではあまり馴染みはないような気がします。そんな名前のアイドルが、昔いましたが(それは、「アグネス」)。著者である市江さんによれば、それは「強いられるのではなく、自分が望んで健康であること」なのだそうです。リハビリテーション科の専門医である著者は、さまざまな実例から押しつけられたプログラムをこなそうとすると、人は必ず挫折することを痛いほど体験しています。そもそも人間は「努力」を継続するのが苦手、年をとってからも「脳トレ」などのドリルで苦しめられるなんて、たまったものではありません。それだったら「楽」な方法で継続できるプログラムはないか、そこで、著者のもう一つの専門分野である「音楽」の登場です。要は、「音楽を通して、楽しみながら健康な生活を維持しよう」というわけなのです。
ただ、「音楽」と言っても、それをただ聴いているだけでは「ウェルネス」を手に入れることは出来ません。「音楽」を自分で奏でる、つまり楽器を演奏することによって、それが初めて可能になるのだ、と著者は訴えます。そうなんです。常々、クラシックに限らず、ロックなどのミュージシャンは、同年齢の一般人に比べていつまでも若く見えるし、実際若々しい生活をしている(ポール・マッカートニーなどは、新しい奥さんとの間に子供ももうけましたね。もっとも、すぐ離婚してしまいましたが)のが不思議でしょうがなかったのですが、それにはちゃんとした医学的な理由があったのです。
著者は、専門的な知識を駆使して、その仕組みを解明してくれます。管楽器や声楽では心肺機能、楽器の演奏全般では運動機能、そして、楽譜を読んだり他の人とアンサンブルをする時には脳の機能が著しく活性化するという事実を、時には実際に著者が行った実験結果も交えて詳細に説明しているのです。ここまで丁寧に勧められれば、少なくとも「音楽」が嫌いな人ではない限り、今すぐなにか楽器を始めてみようという気になってくるはずです。さあ、こんなところで偏屈なレビュー(「おやぢの部屋2」のことですよ)などを読んでいるヒマがあったら、とりあえず著者イチオシのリコーダーあたりから始めてみてはいかがでしょうか。
もちろん、ここではある程度の年をとってから楽器を始める、あるいは、昔(若い頃)はやっていたけれど、かなり長い間その楽器には触ってはいなかったという人が主なターゲットになっています。そこで、そのような人が門を叩くであろう「師匠」に対しても、著者は提言することを忘れてはいません。正直、読んでいてこの部分が一番面白かったのですが、中高年の人たちは、何もこれからプロの演奏家を目指すわけではなく、楽しく楽器を演奏したいためにレッスンを受けに来ているのです。そういう人たちを受け入れる「師匠」サイドの意識改革、これはぜひとも必要なことです。そのための努力を惜しむ「師匠」たちは、「『師匠』の成長を待っている時間はありません」と見切りを付けられて、中高年の弟子には去られてしまうことでしょう。
実は、筆者とは同じオーケストラで席を並べて演奏していた間柄でした。この本の中で述べられている、オーボエからチェロに転向した経緯もよく知っています。著者自身の真剣に音楽に立ち向かう、そして心から楽しんでいる姿勢を目の当たりにしていると、その「体験」がとても重みのあるものに思えてきます。市江さんを見習って、「ウェルネス」を手に入れるための「努力」、いや、「楽しみ」を、ぜひ実践したいものです。
それにしても、ここに書かれていることは飲み会の席でさんざん聞かされたこと。それがこんな立派な本にまとまってしまったのですから、ちょっと驚いているところです。
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by jurassic_oyaji | 2007-09-18 19:45 | 書籍 | Comments(0)