おやぢの部屋2
jurassic.exblog.jp
ブログトップ
Jolivet Conducts Jolivet
c0039487_234466.jpg



André Jolivet/
Members of NHK Symphony Orchestra
TOWER RECORDS/NCS-547



タワーレコードが、今はもう廃盤になって手に入らないアイテムを、丁寧に再発してくれています。そんな中で、このシリーズは、「ビクター・ヘリテージ・コレクション」というもの、ウィンナーとかフランクフルトでしょうか(それは「ソーセージ・コレクション」)。本当は「遺産」という意味のこのシリーズ、現在のビクター・エンタテインメントが「ビクター音楽産業」と名乗っていた時代よりもさらに昔、日本ビクターが直に音楽ソフトも製造・販売していた頃の録音が集められています。ちなみに、「音楽産業」としてソフト部門が独立したのは1972年のことでした。
今の日本のレコード会社のクラシック部門というものは、かなり悲惨な状況に陥っています。SONYWARNERなどは、そもそも親会社がクラシックに見切りを付けて新しい録音を行わないようになっていますから、出るものといったら過去のカタログの焼き直しばかりです。自社で制作しようとしても、ある程度販売の見込める「ライトクラシック」のしょうもないアーティストに限られてしまいますから、到底まともなクラシックファンの食指が動くようなものは生まれては来ません。いや、なによりも、実はこういう会社のクラシック担当のスタッフは、クラシックのことを何も知っていないという、恐ろしい現実があるのですから。
そんな昨今の業界事情からは想像も出来ないことですが、セールスのことなどは何も考えず、ひたすら「文化」とか「芸術」に貢献するだけのためにレコードを作っていた、という幸せな時代が確かにありました。クラシック自体が非常に偏った趣味で、愛好者の人口も極めて少なく、利益を上げるのは最初から無理、商売は他のポップスや歌謡曲の部門に任せて、好きなことをやってやろうという道楽息子の発想でしょうか。もちろん、こんなマニアックなものは売れるわけはありませんから、一度発売されればそれでおしまい、40年近く経った今頃になって、やっとCD化されたというわけですね。
このアルバムは、フランスの、当時は現代作曲家だったアンドレ・ジョリヴェが1970年に来日したときに、N響のメンバーを集めてスタジオで録音されたものです。この録音のあと、1974年にはジョリヴェは亡くなってしまうのですから、まさにかけがえのない記録となりました。
演奏されているのは、「フルートと打楽器のための協奏的組曲」と、「7人の奏者のためのラプソディ」という、どちらも打楽器が大活躍する曲です。フルートの小出信也と、4人の打楽器奏者による「協奏的組曲」などは、1965年にランパルのために作られたばかりの曲です。そのランパルがERATOに録音したのが1966年ですから、これは世界で2番目の録音なのかもしれません。それはまさに、若々しい演奏家たちが全力でこの「新しい」曲に立ち向かっている姿が生々しく記録されたものでした。いかに作曲家自身が指揮をしているといっても、とりあえずこの複雑なリズムを音にするだけで精一杯という、なにか痛々しいものまで、そこからは感じられてしまいます。ランパルの録音や、ずっと後になってからのアランコ(ONDINE/1993年)盤に見られる4人の打楽器が醸し出すアンサンブルの妙などは、望むべくもありません。フルート・ソロにしても、とても早く演奏しなければならない第3楽章を、いかに安全に乗り切ろうかという思いがありありと見えてしまって、思わず笑いを誘われてしまいます。この楽章の途中にはっきりテープをつないだ跡が残っていますから、それだけテンポを落としても、結局うまくいかなかったのでしょうね。「ラプソディ」の方も、トランペットが派手に間違えていますし。つまり、これは当時の演奏家の現代音楽に対する水準というものを見事に「記録」として後世に残したものでもあったのです。
このアルバムをプロデュースしたのは井阪紘さん、もちろん、後に「CAMERATA」レーベルを作ることになる方です。
[PR]
by jurassic_oyaji | 2007-10-02 23:05 | 現代音楽 | Comments(0)