おやぢの部屋2
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Beauty and the Beatbox
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Shlomo(human beatbox)
The Swingle Singers
SIGNUM/SIGCD104



あのスウィングル・シンガーズが、いつの間にかSIGNUMからCDをリリースするようになっていたのですね。キングズ・シンガーズもこちらにお世話になっているようですし、なかなか侮れないレーベルです。今回の最新アルバムのタイトルは、もちろん「Beauty and the Beast」のもじりでしょう。ブックレットのメンバー・フォトを見てみると、4人の女声はいずれも美女揃いですが、4人の男声は音楽監督のトムくん以外はまさに「野獣」といった面構えですからね。「ビートボックス」というのは聞き慣れない言葉ですが、「ヒューマン・ビートボックス」という言い方で、「ヴォイス・パーカッション」よりも多彩な、声だけによるリズム楽器の模倣、いや、時にはターンテーブルのスクラッチまでも再現してしまうという、最先端のパフォーマンスです。ここではその道の達人、シュロモが参加して、その驚異的な技を披露してくれています。
1962年にウォード・スウィングルによって創設されたこのヴォーカル・グループは、もちろん最初はバッハのインスト曲をスキャットで演奏するということで注目を集めたわけですが、それだけにはとどまらずに常に新しいものへの果敢な挑戦を行ってきました。フランスからイギリスへと本拠地を変え、メンバーをすべて入れ替えた頃には、打ち込みシンセをバックにしてルネサンス期のマドリガルをそのまま歌うという、ミスマッチが高い次元で昇華した素晴らしいアルバムを作っています。
1984年にリーダーのウォードが引退してからは、さらに広範なジャンルのレパートリーを持つア・カペラのグループとして、メンバーチェンジを繰り返しながら全世界で活躍を続けています。もちろん、今はやりの「ヴォイパ」を取り入れることも忘れてはいません。
このアルバムでは、そんなスウィングルが、決して今までのキャリアを忘れてはいないのだな、という感慨を強く抱くことが出来ます。同じメンバーは全くいないのにもかかわらず、昔日のちょっとハスキー気味な音色が、そのまま引き継がれているというのが、ほほえましくも感じられます。チック・コリアの「スペイン」でのユニゾンがいかにもゆるめに決まっているあたりも、このグループならではのことです。一方で、アルトのキネレット嬢などは、まるでオリジナル・メンバーのクリスチャンヌ・ルグランのような見事にジャジーなスキャット・ソロを聴かせてくれています。それは、スウィングルからは袂を分かったはずのクリスチャンヌの精神までをも、今のグループは受け継いでいるかのように聞こえるものでした。そういえば、ウォードがアレンジした「It's Sand, Man!」には、まるで初期のマンハッタン・トランスファーのようなテイストが漂っているとは思いませんか?
クラシックのアレンジも冴えています。パーセルの「ディドの死」のような選曲も、いかにもこのグループの伝統を感じさせるものです。この曲を、決して重たい情緒を漂わせることなく、軽やかなビートに乗せてサラッと仕上げたセンスは、トムくんのアレンジャーとしてのスキルの高さを物語っています(この曲は、シングルカットされているようですね)。ラヴェルの「ボレロ」も、オリジナルの持つ退屈さをそのままコーラスに置き換えることに成功しています。
ただ、のべつヴォイパがビートを刻んでいるという状況は、ちょっと煩わしいと感じられてしまうのも事実です。最後のトラック、かつてのこのグループのレパートリー、バッハの「バディヌリー」のセルフ・パロディともいうべき「Bachbeat」でのヴォイパ、いや、ビートボックスの執拗な応酬には、ちょっとひるんでしまう人もいるのでは。ヒップ・ホップまでその範疇に取り込んでしまった気でいるスウィングル、いったいこれからどのような道をたどろうとしているのでしょうか。とりあえず、きつめのパンツで勝負ですか(それは「ヒップ・アップ」)。
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by jurassic_oyaji | 2007-10-06 21:12 | 合唱 | Comments(0)