おやぢの部屋2
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BRUCKNER/Mass in E minor & Motets
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Stephen Layton/
Polyphony
Britten Sinfonia
HYPERION/CDA67629



ブルックナーのモテットを入れたCDは、このレーベルにはすでに1982年に録音されたマシュー・ベスト指揮のコリドン・シンガーズの演奏がありました。これは殆どこの曲の決定盤と言っていいほどの完成度を持ったものでしたから、まさか同じレーベルから新しい録音が出るとは思いもしませんでした。しかし、それからきっかり四半世紀後、2007年に録音されたこの演奏は、ベスト盤(いえ、コンピレーションではなくて、さっきのCDということなのですが)とは別の意味での、さらなる決定盤となっていたのですから、嬉しさもひとしおです。
レイトン指揮のポリフォニーという、まさに泣く子も黙る実力を誇るコンビは、しかし、ここではその緻密なハーモニーはそのままに、ある種荒っぽいと感じられるほどのアクティブな歌い方で、曲の持つ「力」を前面に押し出しているように感じられます。モテットの中で最も有名な七声の「アヴェ・マリア」は、出だしの女声三部、それに続く男声四部とも、なんの曇りもないいつもながらの彼らの密度の高いハーモニーが堪能できます。しかし、その後の「Jesus」というテキストで3度繰り返されるセクエンツになったとたん、その様相は一変します。それは、なんとも切迫感のあるたたみかけでした。回を重ねるごとにテンションが高まっていき、最後、ソプラノが高いAの音になるクライマックスでは、とても無伴奏の合唱とは思えないほどの迫力、それはまるで、オーケストラでティンパニのロールのあとにシンバルが高らかに打ち鳴らされる情景すら、浮かんで来るほどのものではないでしょうか。
そして、おそらくこのアルバムのメインであるホ短調のミサ、いわゆる「ミサ曲第2番」です。教会の建物の落成式のために作られたということで、野外で演奏されることが前提になっていますから、伴奏はオーケストラではなく管楽器のアンサンブル、つまりブラスバンドになっているという、珍しい形のミサ曲です。そのために、どうしても教会の内部で行われる敬虔なミサ、という感じではなく、なにか華やいだ、もっと言えばかなり荒っぽい印象を持ってしまいがちです。そんな印象は、もしかしたら、やはり同じレーベルにある1985年に録音されたベスト盤などを聴いてきたことによって作られてしまったイメージだったのかもしれません。どうしても、繊細な合唱と、こんなことを言ってはいけないのかもしれませんが、「粗野」なブラスバンドとが、なにか遊離したもののように思えてしまっていたのです。
しかし、今回のものを聴けば、そんな悪しき「ブラバン」のイメージは全く覆されてしまうはずです。なにしろ、ここでの合唱は、荒々しさすらもきっちり表現として取り入れるだけのキャパシティを備えていますから、多少乱暴な伴奏とでも十分に拮抗できるだけのものを持っています。そんなアンサンブルと合唱の共演は、やはりこの曲から桁外れに大きな「力」を引き出すことに成功しました。例えば合唱だけで始まる「サンクトゥス」の冒頭では、最初は静かだったその合唱が、みるみるうちに強靱な響きに成長していきます。そして、金管のトゥッティが加わる頃には、その金管を凌ぐほどの存在感を示せるほどになっているのです。
「ブラバン」に拮抗できるほどの力を持った合唱が、曲の「力」を見せしめてくれた結果、このミサ曲に今まで抱いていたイメージがガラリと変わってしまいました。そこには、交響曲と何ら変わることのない世界が広がっていたのです。合唱曲の分野でも、ブルックナーは巨大な建造物のような響きを追い求めていたことが、レイトン達の演奏によって明らかになった瞬間、それはまさに「感動的な体験」に他なりません。
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by jurassic_oyaji | 2007-10-12 20:55 | 合唱 | Comments(0)