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BACH/Préludes, Toccatas, Fantaisies & Fugues pour orgue
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Maurice Duruflé(Org)
Marie-Madeleine Duruflé(Org)
EMI/501300 2



バッハのオルガン曲全集と言えば、普通はCDで10枚を軽く超えるものですが、これは5枚組、タイトルをよく見たら「前奏曲、トッカータ、幻想曲とフーガ」ですって。つまり、バッハ作品目録のBWV531からBWV566までの曲を律儀に番号順に並べ、その他に有名なト短調のフーガBWV578や「パッサカリアとフーガ」BWV582などを加えたというものでした。従って、トリオソナタや、オルガン・コラールは全く含まれてはいません。もっとも、これが録音された1960年代前半には、そんなすべてのオルガン曲を網羅した「全集」などはヴァルヒャとアランのものぐらいしかなかったのでしょうから、これだけのものを揃えたフランスEMI(「パテ」ですね)の勇気は称賛されるべきものでしょう。
演奏しているのは、あのモーリス・デュリュフレと、彼の奥さんのマリ・マドレーヌ・デュリュフレです。最初はモーリスの職場のサン・テツィエンヌ・デュ・モンで、彼のアシスタントを務めていたマリ・マドレーヌですが、後にモーリスと結婚、よくある話ですね。「レクイエム」を作曲者自身が指揮をしたERATO盤では、彼女がオルガンを弾いていましたね。ちなみに年の差は19才でした。う、うらやましい。もっとも、その20年後には二人一緒に自動車事故に遭ってしまい、かろうじて一命はとりとめたものの、演奏家としての生命は絶たれてしまうという痛ましい未来が待っているのですが。
録音が行われたのは、彼らのホームグラウンドではなく、ソワソンのサン・ジェルヴェ・サン・プロテ大聖堂、1963年から1965年にかけて収録されています。録音年代、そしてレーベルを考えると、決して良い音は期待できないと思っていたのですが、聴いてみるとその繊細な響きには驚かされてしまいました。フランス風のストップがふんだんに用いられているゴンザレス・オルガンの明るく軽やかな音が、見事に眼前に広がっていたのです。考えてみれば、デュリュフレがプレートルと共演したサン・サーンスの交響曲第3番は1963年の録音、あれだけスペクタクルなサウンドが実現できていたのですから(オルガンのピッチが低いのがすごく気になりますが)、このバッハでの良い音も頷けます。データを見てみたら、録音スタッフは全く同じ人、当時のフランスEMIの録音クオリティは、ある意味現在のものをはるかに凌いでいたのではないでしょうか。
全体の曲目のほぼ半分ずつを二人で弾き分けるという構成、有名なニ短調の「トッカータとフーガ」BWV565やト短調の「幻想曲とフーガ」BWV542はマリ・マドレーヌの担当です。ここで彼女は、めくるめくレジストレーションの変化を存分に楽しませてくれます。ストレスも発散できるほど(それは、「フラストレーション」)。重厚とは無縁の、かなり高い周波数のスペクトルが勝った明るい音色、クセのあるリード管も惜しげもなく使って、いかにもフランス風の、まさに「幻想的」な世界を見せてくれています。フーガも軽やかなテンポで淀みなく進むさまは、いかにもオシャレ。
ご主人の方も、基本的にフランス風の洒脱なたたずまいは健在です。しかし、若い奥さんに比べるとそれだけ堅実さが前に出てきているような印象が与えられるのは、「パッサカリアとフーガ」BWV582のような渋めの曲を演奏しているせいでしょうか。「トッカータ、アダージョとフーガ」BWV564も、ちょっとまじめ過ぎるように聞こえてしまいます。
こういう、いかにも往年のバッハ像が反映されたようながっちりした曲だけではなく、もっとこじゃれたコラールなどは彼らは録音してはいなかったのでしょうか。そんな曲での二人の個性の違いなども、ぜひ聴き分けてみたいような気がします。
作曲家でオルガニスト、教え子の若い演奏家を妻に迎えるなど、デュリュフレという人はあのメシアンとよく似た人生を送っていたのですね。
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by jurassic_oyaji | 2007-10-22 20:33 | オルガン | Comments(0)