おやぢの部屋2
jurassic.exblog.jp
ブログトップ
Sinfonie avanti l'Opera intorno a Mozart
c0039487_20263367.jpg



Francesco Quattrocchi/
Orchestra Sinfonica Abruzzese
BONGIOVANNI/GB 5634-2



タイトルを直訳すると「モーツァルトの周辺の、オペラの前の交響曲」となります。もちろん「Sinfonie」を「交響曲」と訳すのはこの場合は不適当、当時はオペラの前に演奏された、ある種「呼び込み」というか、「1ベル」のような役目を果たしていた音楽のことを「シンフォニー」と言っていたのですから、「序曲」と訳すべきでしょう。これらの「序曲」は急-緩-急の3つの部分に分かれていることが多く、それに踊りの音楽であるメヌエットなどを加えて独立した楽曲となったものが将来は「交響曲」と呼ばれることになるのです。もっとも、「交響曲」などというおどろおどろしい字面を持つ言葉はもちろん日本語だけのものですね。ベートーヴェン以降の「シンフォニー」にしか通用しないようなこの訳語も、そろそろご用済みになって欲しいものです。
このCDに収められているオペラの序曲は、すべて世界初録音のものなのだそうです。そういうものを聴いてみたいと思うのと同時に、それが「モーツァルト周辺」の作曲家のものであるというのに、非常に興味を覚えました。モーツァルトは確かに才能にあふれた作曲家ではありますが、その音楽は彼個人の才能だけでは決して生まれたものではないことは自明の理です。彼と同時代の作曲家達の作った「知られざる」曲を聴くたびに、そんな思いはどんどん募ってきたところ、こんな企画でそれをさらに確固たるものにしたいという気持ちがあったのです。
ここに収録されている序曲の作曲家は全部で5人、そのうちのジョヴァンニ・パイジエッロ、アンドレア・ルケージ、そしてドメニコ・チマローザの3人は作品を聴いたことのある人たちでしたが、残りのニコロ・ピッチンニとパスクワーレ・アンフォッシは今回初めて聞く名前と、そして初めて聴く作品です。「アンフォッシ」さんなんて、甘い物好きだったのでしょうか(餡、欲し)。
最初の、そのピッチンニの「偽のトルコ人」という、いきなりタンバリンなどが聞こえてくる、それこそモーツァルトの「後宮」のようなオリエンタル・テイスト満載の曲では、ちょっとした失望感を味わってしまいました。オーケストラが全くやる気がないのがはっきり分かってしまうのです。写真などを見ると一応プロのオーケストラのようではありますが、出てくる音はまるっきりのシロート、テンポは定まらないし、オーボエ・ソロの音程など悲惨なものです。そして、ピッチンニ先生の曲が、本当につまらない、気の抜けたようなものだったのですよ。もしかしたら、モーツァルトはこんな人たちとは別格な存在としてこの時代に君臨していたのでは、と本気で考え直したくなったほどです。
しかし、同じようにつまらない「アメリカのナポリ人たち」に続いてパイジエッロの「親切なアラビア人たち」という曲になった途端、オーケストラの響きが俄然変わってしまったのですから驚きます。それまで決して聞かれることのなかった生き生きとした魂の昂揚のようなものが、ここからは見事に発散されるようになってくるのです。その流れるようなグルーヴ感と、時折見せてくれるちょっと意外なメロディの変化は、まさにモーツァルトと全く変わらない様式の中から生まれてくるものでした。
その後、アンフォッシの曲では、ピッチンニほどではありませんが凡庸なたたずまいを感じたものの、ルケージ、そしてチマローザでは、モーツァルトの曲の持つスピリットにかなり近いものを彼らが持っているということが確認できました。
モーツァルトの時代には、彼と同程度の作曲家はいくらでもいたということは、もはや揺るぎのない事実です。それと同時に、当然の話ですがどうしようもない作曲家もいくらでもいたということを、クワトロッキの指揮する名もないオーケストラは、見事に証明してくれたのです。
ちなみに、このアルバムの企画、選曲、楽譜校訂を行ったのは、日本の音楽学者、山田高誌さんです。
[PR]
by jurassic_oyaji | 2007-10-24 20:28 | オーケストラ | Comments(3)
Commented at 2007-12-02 03:09 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by jurassic_oyaji at 2007-12-02 20:20
T.Y.さま。
コメントありがとうございました。
確かに、日本人らしき方のお名前がクレジットされていたので、気にはなっていたのですが、お目にとまって嬉しく思います。
次のCDも楽しみにしております。
Commented at 2007-12-02 20:46 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。