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BACH/Goldberg-Variationen
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Hansjörg Albrecht(Org)
OEHMS/OC 625



以前、ワーグナーの「指輪」全曲(実際にはハイライトですが)を、オルガンで演奏するという暴挙に及んだアルブレヒトが、今回は少しおとなし目、バッハのゴルトベルク変奏曲をオルガン用に編曲して演奏しています。「指輪」の時には一人でオルガンを2台操るという離れ技も披露してくれていましたが、こちらはまっとうな普通のオルガン、3つの手鍵盤とペダルという、中型の楽器です。
普通にピアノやチェンバロで演奏するだけではなく、弦楽器3本のアンサンブルなど、この曲を別の形で演奏する試みは数多く知られています。ただ、オルガンで演奏したものは今までは聴いたことがありませんでした。このアルブレヒトの編曲では、オルガンならではの音色の変化と、音量を自在にコントロール出来ることによる壮大なダイナミックスを楽しむことが出来ます。
テーマである「アリア」は、まるでオルガン・コラールのように聞こえてきます。バス声部が独立してペダルで演奏されているため、いかにも落ち着きのある感じ、その分、左手の声部が、今まで聴いたことのなかったようなはっきりとした主張を見せてくれます。ですから、右手の声部は自由自在に華やかな装飾を楽しんでいるよう、最初のトリルも、主音の3度上から始めるというちょっと聴き慣れないものです。
第1変奏から、このペダルはとても効果的な使い方をされています。アクションの関係なのでしょうか、頭にアタックが付くというものですから、まるでチョッパー・ベースのように目立って聞こえます。
第3変奏では、ペダルはお休み、その代わり、右手はリード管、左はフルート管と、音色をめいっぱい変えて、カノンの動きを際だたせています。第7変奏のシチリアーノでは、倍音管も混じってなんともはじけたにぎやかな世界が広がります。
13変奏は、バッハの典型的な緩徐楽章、オルガン曲でいえばパストラーレBWV590のようなたたずまいでしょうか。ゆったりとしたバスに乗って、豊かな装飾が施されたテーマが流れます。この雰囲気は、伸ばした音が切れてしまうチェンバロよりは、ずっとオルガンの方が向いています。
14変奏になると、華やかなトッカータでしょうか。幅広い音域を駆け回るごとに音色が変わるのが楽しめます。前半の最後となる第15変奏でのオスティナートを形作るバスは、低いオクターブを不気味にさまよっているかのようです。
後半の幕開け第16変奏こそは、オルガンの魅力が全開となって迫ってくるものです。このフランス風序曲の世界は、とても他の鍵盤楽器で描くことは出来ません。最後のフーガのかっこいいこと。
19変奏のように軽やかなパイプの手鍵盤だけであっさり演奏されるのも、壮大な響きの中での息抜きになります。オルガンのダイナミックスの幅がいかに大きいかということでしょう。それは、第25変奏の「暗さ」から、第26変奏の「明るさ」に瞬時に切り替われるだけの音色の幅の広さにもつながります。
29変奏の壮大そのもののトッカータを経験し(このペダルの迫力は、ものすごいものがあります)、最後の第30変奏のグランド・フィナーレを迎える頃には、この曲をオルガン以外の楽器で聴いた時にはちょっと物足りなさを感じるカラダになってしまっているかもしれません。そのぐらい、サウンド的にはインパクトのある、このオルガン・バージョンでした。
とは言ってみても、各々の変奏のキャラが、あまりに分かり易くカラフルに表現されていることに対して、逆に抵抗を持ってしまう人もいるかもしれません。この曲はもっとストイックであるべきだ、と。それはそれで構わないことでしょう。このオルガン・バージョンでもたらされたイメージはあくまでアルブレヒトの主観にすぎないのですから、誰の迷惑にもなりません(迷惑なのは「痴漢」)。
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by jurassic_oyaji | 2007-11-03 01:18 | オルガン | Comments(0)