おやぢの部屋2
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MacMILLAN/Tenebrae
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Alan Tavener/
Cappella Nova
LINN/CKD 301(hybrid SACD)



1959年生まれ、スコットランド出身のジェームズ・マクミランは、現在最も旺盛に活躍している人気作曲家です。ちょっと酸っぱいですが(それは「ナツミカン」)。「人気」の尺度は、演奏される頻度と、出版の多寡、彼の場合、作品はすべてブージー&ホークス社から出版されていますが、そのリストを見てみると多岐にわたるジャンルでおびただしい数の作品が出版されていることが分かります。遠藤周作の「沈黙」に題材を得た「交響曲第3番」は2003年にデュトア指揮のNHK交響楽団によって初演されましたし、最近ではウェールズ国立歌劇場のために「サクリファイス」というオペラも作っているようです。
今回の新しいSACDには、輸入元による日本語の帯に「合唱のための新しい音楽」とあります。そんな風に言われると、合唱を使ってなにか特別に「新しい」ことに挑戦しているように思えては来ませんか?ヴォイス・パーカッションとラップだけで演奏しているとか。しかし、元々のタイトルは「New Choral Music by James MacMillan」ですから、これは単に「J・マクミランの新作合唱曲」ぐらいでいいのではないかと思うのですが、どうでしょう。
そんな英語のサブタイトルのように、このSACDにはマクミランのごく最近の合唱曲が集められています。しかも、それらは、ことさらジャケットに表記はありませんが、すべて世界初録音となっているものばかりなのです。おそらく、そういう意味を「New」という言葉に込めたのでしょうが、日本の代理店の「帯」作成担当者は、見事にそのことを見逃してしまいました。
ただ、正確には、「新作」とは言えないものも、この中には含まれています。それは、1977年と言いますから、作曲家がまだ18才の時に作られた「ミサ・ブレヴィス」です。しかし、この曲は今まで演奏されたことはなく、すべての楽章が完全な形で、このSACDのアーティスト、アラン・タヴナー指揮のカペラ・ノヴァによってエディンバラで演奏されるのは、なんと本日、20071122日のことなのです。このコンサートでは、もう1ステージ、全部で7曲から成る「ストラスクライドのモテット集」も、やはり世界初演されることになっています。こちらは全曲が完成したのが2007年ですから、正真正銘の「新作」ということになります。このSACDが録音されたのは2007年の4月、と言うことは、その初演コンサートに先立って、「前録り」されたものになります。おそらく、コンサートの会場ではこのSACDが山積みになって即売されていることでしょう。まるで、アルバムを作ってからツアーを行うようなロック・グループのノリですね。ちなみに、このグループ(いや、合唱団)も、今日を皮切りにスコットランドの各地で4日間の「ツアー」を行うことになっているそうです。
さらに、このアルバムには、録音の直前にやはり彼らによって初演が行われた2006年の作品「テネブレの応唱」も収められています。つまり、これはマクミランの30年前の作品と、今出来たばかりの作品を初めて録音したという、まさに画期的なものになるわけです。
その、30年前に作られたという「ミサ・ブレヴィス」は、確かに若さ故の意欲にあふれた作品です。ことさらポリフォニーを多用して、「ミサ」ぶってはいますが、「Sanctus」で見られるような無機的な音列によるテーマには、確かな挑戦が感じられます。それから時を経た現在の作品にも、そのような挑戦的な意欲は十分に感じ取ることが出来ますが、それは若者のあがきではない、高い次元での訴えかけを持っているものです。そこに多く含まれているものは、ケルト文化に由来する要素でしょうか。最後のトラック、「テネブレ」の3曲目がそんなケルトのテイストをたたえてフェイド・アウトしていくときには、この30年の軌跡の確かさを誰しもが認めることでしょう。もちろんそれは、このような曲を歌うときのこのスコットランドの合唱団の共感に満ちた演奏があってこそのものであることも、忘れるわけにはいきません。
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by jurassic_oyaji | 2007-11-22 20:29 | 合唱 | Comments(0)