おやぢの部屋2
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Héroïnes Fantaisie
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Armande Altaï(Voc)
O+/OP 131 HM 87



フワフワのレースの中に埋もれた金髪の美女、この人こそが、この「ヒロイン・ファンタジー」というアルバムの主人公、フランスのシンガー・ソングライター、アルマンド・アルタイ嬢です。いや、「嬢」というにはちょっと年齢を重ね過ぎているような気がしますが(妙なお色気もあるたい)、まあそんなものは芸能界にはありがちなことですからあまり気にしないようにしませんか?
収録されている曲目は全部で14曲、オリジナル曲に混じってクラシックの曲が6曲入っていますから、どのように料理されているのかも、興味が湧くじゃないですか。
彼女の作風は、まるで19世紀末のパリのような、異国情緒あふれるものです。もちろん、東洋的な雰囲気も満載、何しろ1曲目からしてタイトルは「キミコ」、おしとやかな日本女性のイメージかと思いきや、ドラは鳴るは5音階は炸裂するはで、見事なまでの中国趣味、日本も中国も一緒くたになったありがちな世界観が広がっているものだったのですからね。いえ、そんな、コンピュータの打ち込みによるオケなどはどうでも良いのですよ。胡弓のイントロに続いて聞こえてきたヴォーカルは、なんともインパクトのあるものでした。吐息混じりのその不思議なビブラートを伴う声は、紛れもない「オトコ」のものだったのですよ。そう、アルタイ嬢とは、実は「オカマ」だったのです。そう思ってジャケットの写真を見直してみると、うん、これは確かに「オトコ」ですね。そういえば、プログラミングにクレジットされているクリストフ・フーサンという人がコーラスなども担当しているのですが、こちらも立派な「オカマ」声、このアルバムは、そんなお友達同士によるコラボレーションの成果だったのですね。
そんな、ジェンダーを超えた営みは、次の「ソルヴェーグ」で見事に花開きます。もちろんこれはグリーグの「ペール・ギュント」からの有名なナンバー、これをアルタイ嬢(と言っておきましょう)はそのなんとも言えない不思議な声で、朗々と歌い上げてくれたのです。それは、殆どお笑いでの「オカマの物真似」と言っても良い次元のもの、こんなものを堂々とCDにしてしまってもいいのだろうか、と思いつつも(正直、最初聴いたときには笑い転げてしまいました)彼女の、自らの嗜好を信じ切ったパフォーマンスには圧倒されずにはいられませんでした。それは、生オケを忠実に再現したオケの力だったのかもしれません。とは言っても、やっぱり長調に変わって「あ~、ああっ、ああっ、ああ~」と歌われるヴォカリーズの部分では笑いをこらえることは出来ませんでしたがね。
さらに、心ならずも大爆笑せざるを得なかったのが、オルフの「O Fortuna」です。「カルミナ・ブラーナ」の最初を飾る迫力満点の合唱曲、これを、彼女はフーサンの力も借りてしっかり多重録音の「混声」合唱に仕上げてくれたのですよ。想像してみて下さい。何十人ものオカマが一斉に「お~、ふぉるとぅっなっ」と歌っている様子を。そこからは、間違いなく原曲以上の卑猥さを聞き取れるはずです。でもなぁ、この脱力感は・・・。
マーラーの「亡き子をしのぶ歌」からの「おまえのお母さんが」という暗~いナンバーに挑戦するときには、逆になんか余計な力が込められているように思えてなりません。オカマが深刻ぶって悲壮感を出そうとしてみても、そこからは「笑い」しか生まれてはこないのですから、これほど辛いことはありません。そういう意味での「悲しさ」を、この曲からは受け止めるべきなのでしょうか。
ただ、ヘンデルやパーセルの曲では、それほどのおかしさは味わえず、妙な居心地の良さを感じたのは、この時代の音楽にはそもそもジェンダーレスの要素が潜んでいたせいなのかもしれません。パーセルの「アーサー王」からの「寒い歌」での「あたしをキンキンに凍らせてちょうだい。死ぬんだから」という訴えは、悲痛そのものです。
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by jurassic_oyaji | 2007-12-10 20:07 | ポップス | Comments(0)