おやぢの部屋2
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French Delights
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Sharon Bezaly(Fl)
Love Derwinger(Pf)
Barbara Hendricks(Sop)
BIS/BIS-SACD-1639(hybrid SACD)



このタイトルに輸入代理店が付けた「邦題」が「仏蘭西の喜び」ですって。ありがちな「フランス音楽名曲集」みたいなものよりはずっとおしゃれなセンスですね。
現代曲とか、委嘱作品とか、ちょっと親しみにくい曲ばかりを録音しているというイメージの強いベザリーですが、これはちょっと傾向の違う、フルート愛好家にとっては馴染みの深い曲を集めた、まさに「名曲集」です。彼女の美しいポートレイトで飾られることの多いジャケットも、ここではガラリとおもむきを変えて、とてもおいしそうなものになりました。テーブルの上に、彼女の分身の村松の24金がさりげなく置いてあるというあたりも、粋なセンス。なんたって、ピアニストの方のお名前が「Love」ですもんね(北欧の人ですから「ルーヴェ」と発音するのだそうですが)。
曲は、フルーティストのリサイタルには頻繁に登場するものばかりです。サンカンのソナチネ、ヴィドールの組曲、ルーセルの「笛吹きたち」、ミヨーのソナチネ、そしてゴダールの「3つの小品」、どうです、なんともベタな選曲ではありませんか。しかし、さすがはベザリー、サプライジングなゲストを迎えてくれました。それはアメリカ出身のソプラノ歌手、バーバラ・ヘンドリックスです。今ではオペラだけではなくジャズにも挑戦している彼女は、なんと自らのレーベルまで立ち上げたそうですね。しかし、なぜベザリーと共演?
と不思議に思ってしまいますが、彼女は今はスウェーデンに住えんでんだそうなのです。だったら、このスウェーデンのレーベルに登場するのも納得です。
ヘンドリックスが参加しているのは、ルーセルの「ロンサールの2つの詩」です。フルートとソプラノだけのデュエット、というよりはまるで2人の会話のような素敵な曲です。ヘンドリックスとベザリーの輝かしい音と煌めくほどに装飾的なフレーズたちが、とても美しく絡み合っていますよ。まず最初にフルートだけで長~い長~いソロが歌われるのですが、その間にベザリーは全くブレスをとっていないのには、びっくりさせられてしまいます。もちろん、彼女はしっかり「呼吸」はしているのですが、その間にもフルートからは音が出続けているという、これは彼女の得意技、「循環呼吸」の、まさに大プレゼンテーションが、そこでは披露されていたのです。
ラブ、ではなくてルーヴェさんとのデュエットでは、他のコンチェルトのアルバムを聴いたときのような、ピアノばかりが大きくてフルートがちょっと引っ込んでいるような音場設定です。以前CDで聴いたときには確かにフルートがあまりよく聞こえてこなかったのですが、今回きちんとSACDで聴いてみると、これがバランス的にはなんの問題も感じられないのです。おそらくこれは、ソロ楽器がしっかり立って聞こえてくるというSACDの解像度を前提としたマイクアレンジだったのでしょう。
そんな卓越したエンジニアの手によって、ベザリーのとても密度の高い芯のある音は見事にとらえられています。それとともに、循環呼吸の際の息を吸う音も情け容赦なく収録されてしまいました。口から息を吸う分には息音を極力少なくすることは可能ですが、この場合は鼻から吸っているので、その音は余計に目立ってしまいます。そうなってくると、なにか、「歌っている」というのではなく、プログラミングされた音を正確に再現しているシンセのような感じがしてくるから不思議です。もちろん、それぞれの音には、彼女のもう一つの得意技である「あとから音を膨らます」という「表情」が付けられていますから、シンセのような無機的なものではありませんがね。
でも、ヴィドールの最後の曲など、ほんと、人間が演奏しているとは思えないほどの精密さ、これには感服せざるを得ません。
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by jurassic_oyaji | 2007-12-12 19:58 | フルート | Comments(0)